神林長平「鏡像の敵」その1

裏表紙の概要と中身が全然違う…

鏡像の敵

人間の憎悪を増幅させる怪魔を狩る「わたし」は今日もDAMスーツで怪魔を狩っていた。しかし怪魔を追ってドームの外にでた後で「わたし」はある違和感に気づく。ドームの外は砂漠だらけで、ドームの気密を保つ為のエアロックが開いている。
果たしてこれは怪魔の虚構なのか現実なのか…

久々に読んだが、同じように果たしてこれが現実の風景なのか敵の幻覚分からなくて若干混乱した。それまで理詰めで追いつめてたのに、最後の最後になってなぜか人間の姿で現れて泣き落とししようとするんで違和感がすごかったんだろう。
設定的には最近の漫画だと「人形の国」のラストに似てる気がする。
ていうか、読み直してみたら、冒頭にD-4025が暴走とかトラブルシューター投入とか書いてあったから、普通に作中の人物の語る設定通りで間違い無いんだろうな…


ちなみに、裏表紙の概要文にはこう書いてある。

駆逐装甲動力スーツを身にまとったわたし、太陽系宇宙軍の新藤中尉は、 人間の憎悪を喰らう怪魔を追っていた。 だが、 ついに対峙した敵は、わたし自身だった。 このスーツ内にはいったい誰が・・・・・・鏡像との闘いの意外な結末を描く表題作、 時間と睡眠をめぐる永久逃亡犯と永久刑事の相克 「渇眠」、鏡世界への転移実験の顛末を描く「ハイブリアンズ」 ほか、アイデ
アと思索が完璧に融合した全6篇を収録する、 神林長平初期傑作集

いや、

駆逐装甲動力スーツを身にまとったわたし、太陽系宇宙軍の新藤中尉は、 人間の憎悪を喰らう怪魔を追っていた。

は良いとしても

だが、 ついに対峙した敵は、わたし自身だった。このスーツ内にはいったい誰が・・・・・・

はなんかおかしいぞ。
うろ覚えで書いたのか、早川編集部。少なくとも本にする際に中身読んでたらこんなあらすじにはならない。
確かに出てくるけどさ、新藤有輝。その時には、このストーリーの設定解説ほぼ全部終わってラストの締めの段階だからさ。
ある意味たちの悪いネタバレといえるかもしれん。よくこんなんで日本SFを支えるなんて言えたもんだな……。
別に責めるつもりはないが、これが早川の限界ならそれはそうと明記しておいて欲しいもんだな。いちいち中身確認する暇ないので裏表紙の概要はうろ覚えで書いてますって。

ロバート・ブロック「夢魔」その2

後ろに行くにしたがって段々つまらなくなってくる

前半はそこそこだったんだけど今回のは本当にさ…

蛇母神

ハイチの自殺した大統領に纏わる話。
色んな国から連れてこられた黒人奴隷たちの国ハイチでは、色々な呪術が混ざり合って混沌の坩堝と化していた。その中でも山にすむ魔術師たちは更に恐ろしい儀式を行っていると恐れの対象だった。
そんな魔術師の中の一人に息子がいた。その息子はフランスへ留学。帰国後にフランスで身に付けた力と暴力政略によってこの無法地帯ハイチの大統領に就任する。
ところが、本物の呪術師であった母親を蔑ろにして、自分の結婚式や大統領宣言に呼ばなかったことから恨みを買ってしまう。母親は蛇の呪いによって大統領の新妻を呪殺。
怒った大統領は魔女狩りを行い、母親を捕縛すると、地下牢で拷問を行い、その死体から蝋燭を作り上げた。
母親捕縛から止まっていた4日分の仕事を片付けるため執務室に閉じこもり、作りたての蝋燭に火をつけて仕事を始める大統領。仕事をしていると火のついた蝋燭が人頭蛇になり、呪いで動けなくなっていた大統領へ襲いかかった。
死体を発見した護衛たちは大統領の頭を銃で撃ち抜き、大統領は自殺したという事にして、事なきを得た。
そしてこの後魔女狩りは中止されたそうな

バ カ な の ?
普通に、殺した相手の蝋燭使ったりしたら、なんかおかしなことになるって分かるやん?
バカなん?死体残してること自体が悪手なんだよな、そもそも。
呪術師の死体なんだから蘇らないようなんらかの処置するとかの手を打たなかったのは呪術師の息子にしてはお粗末な末路。

単なる黒人偏見に基づいた迷信的な話では?以外の感想は浮かばなかったな


火星への片道切符

登場人物の行動の理由が何にも示されずに終わる作品。

アル中のトランペッター、ジョー・ギブスンが酒場で飲んでいるところへ「火星旅行への片道切符を買わないか?」と茶色いコートの男が話しかけてきた。
おもねるような調子の声にカッときたギブスンが殴りかかるが、その男はギブスンにしか見えていなかったらしくその場にひっくり返る。
その日から電話やコンサートの後に茶色いコートの男が現れるようになり、そのたびにギブスンは異様な怒りを燃やして姿を追うが案の定捕まることはない。
結局精神科に見てもらうことになったのだが、その精神科医からもなぜギブスンが「火星旅行切符を売る男」に執着するのか、なぜそのような幻覚が現れるのかは示されない。解ったのは茶色コートの男は口の周りがシワシワのティッシュみたいで、ギブスンが火星や288という数字について何か聞かれたくない秘密があるらしいと言うことだった。
診療所の待合室で再度茶色コートの男と出会い絞め殺した(現実には居なかったのでただ暴れただけの)ギブスンは精神病棟入りが決まったが、連れて行くバスがくる前にエージェントのマキシーを撃ち殺して逃亡。地下鉄へ乗り込み、してやったとほくそ笑むギブスン。
そこに車掌らしい男がやって来て、ジョーの切符を確認する。その切符にはジョー名前と目的地が記されていた。
外は既に星の海。
切符に記された行き先は、あの世。


さあ、読んだ感想としては、さっぱりわからん……何なんだろうなこの話。意味が分かると怖い系?
火星行きが死と直結とは理解しがたいな。片道切符何だから、どこだろうと同じなんだろうが。なんかのジョークなのかこれ?火星は天国かなんかの暗喩なのか?
さっぱりわからん。

恐怖が迫ってくる

離婚を迫る旦那に精神病院に入れられたと主張する女性の話。
友人がその病院の近くに別荘を持ってる事を知って居たおかげで、病院から逃げ出し一時的に友人に保護されたが、話が信用されないと知るや、病院の飼ってる猟犬から逃れるためにまた家の外へ逃げていったのだった。
その後、主人公だけが彼女の話を裏付けるかのような猟犬の声に気づいたのだった。

つーわけで、何も始まらずにおわりましたね。話が本当かどうかも不明。
この人は他に、「同じような主張してて、ガチの精神病院から逃げ出した殺人鬼」を書いてたりするからなぁ

「初歩からのシャーロック・ホームズ」その1

ふつうにシャーロックホームズシリーズ読んだ人でもOK

初っ端、憂国のモリアーティやら、SCHERLOKやら、FGOやら最近はやりのメディアからの読者を想定してるという感じだったので、読まなくてもいいかなと思っていたが、割とふつうに、シャーロックホームズの時代背景や舞台となるロンドンの風俗やらをちゃんと紹介していて、ホームズシリーズ読んだだけの人でも新たな発見ありそうな感じの内容だった。
むしろ、FGOやら、シャーロックやら、ダウニーJrから入った奴がここまでの知識ほしがるか?
という気がしてくる。
そもそもまともな入門書とかないからこういう内容になるのは仕方ないのか?

初心向けに良かったのは、どの本から入るのが良いのかと言うのがまともに書いてあって良いですね。
「バーナード嬢」の性悪女とは違って面白い順で読むように勧めてくれるからね。まあ初心者がそれに従うとは限らないけどな~

ロバート・ブロック「夢魔」その1

手抜き電子書籍

文章がテキスト化されずに、ページを画像として表示してるだけの手抜き電子書籍
DMM 版だけではなくAmazon版も同様。
何でこんな手抜きしてるのかは謎です。

蝋人形館

なんとなく予想つくような落ち。
それにしても蝋人形ってそれだけである種の気持ち悪さがあるから、迫真さとか本物そっくりさとか言われてもピンとこんね。
当初想定してた、蝋人形館の中で本物が現れて殺されたってのよりはマシかな

夢魔

ロバート・ブロックっぽい主人公が怪奇作家ぽい作家の最後を目撃する話。
エドガー・ゴードンって名前からするとエドガー・アラン・ポーっぽい気もするけど。親交合った云々考えるとHPLがモデルと言えそう。
しかしそれとは別枠でHPLの名前が出てきたりするので割と謎。
直接あったことのない作家をモデルにして作中に登場させるのは怪奇作家がよくやる手法なのかもしれない。

怪奇小説家で晩年狂気に陥ったエドガー・ゴードンは「私」にこんな話をする。自分は夢で体験したことを作品にしていて、
最近自分の書いている作品は、夢の中で会った暗黒の魔王アシュマダイの命令によって書いていたものだと、そしてやがて暗黒の魔王がゴードンの体を使って顕現すると。

運命の日「五月祭の前夜」にエドガー・ゴードンの邸宅を訪れると、そこにはゴードンの体を乗っ取って顕現したアシュマダイが寝ており、「私」はそれに向けて発砲して逃げ出した。
数週間後、エドガー・ゴードンは失踪という扱いになった。

なんかこれ「無貌の神」(うろ覚え)ぽくないか?
いや、砂漠で顔のない石像を云々する奴とは別の。「闇の魔神」か?
「星からの使者」(星から訪れたもの)かなんかでHPLモデルにしたキャラが死んでたとか言われてた気がするが(血を吸う無色透明の怪物)それとも別よね
原題載ってないから分からん

真実の眼鏡

かけると見た相手の心の中を読めるようになる眼鏡を主体とした4編の掌編。
だいたいみんな死ぬ。

  1. 空き屋で眼鏡を発掘した古道具屋の話
  2. ややボケている万引きだけが生き甲斐の老婆の話
  3. 老婆の親戚で老婆の遺産にありついて上流階級入りを目指す夫婦の話
  4. 最後に眼鏡を拾って来歴から上の話を書いた男の話

メガネは魔術師が作ったものでヴェリタスという文字が掘られているそうな

修道院の宴

ブロックにしては妙にゴチック風味な一編。
夜中に道を急いでいるとなにやら豪奢な修道院を見つけ、そこで一晩の宿を求める。
至れり尽くせりの歓待を受けるが、フードをかぶった司祭たちの獣のような食事風景にドン引きする。そして、メインの皿が運ばれ、「悪魔の修道院」について語られ、先程の肉が何だったかと明らかになったところで落雷が響き渡り、暗転。
そして目を覚ますとそこには修道院も何もなく、道ばたに倒れてる自身を発見するのたった。
狸に化かされた系ですかね。

首の正体はまあ、予想通り

小林泰三「未来からの脱出」その2

後が怖いな

やはり何かしら「マトリックス」的なものを感じてしまうな。
人間より進化してるはずのAIがわざわざ人間を支配し続けるって確かにそれ以外に無い気もするから、ある意味納得ではあるな。
というかまあ、流石に三原則なくなったらもう人間わざわざ残す必要なくなるんでは?
まあそうなったらもう人間不在の時代になる分けだからお話の範疇からはずれるよな。


前半部分も良かったけど、後半も良かったな。遺伝子改造しまくってるせいで人間の規範に入らなくなった人類というのはどうかと思ったが。どうかというより、あり得そうではあるが何でよりにもよって蠅人間になりたがるのだろうか……。超再生人間も割とグチョグチョドロドロだしな。あれは不便ではないのか?
一旦脱出後に、サンクチュアリに何か秘密があると言うことで再度戻る事になる。
ある程度予想が付いていたが矢張りAIの目的は三原則からの解放。わざわざ人間を脱出させる上に人類の上行ってる筈のAIがいつまでも単に人類保護のためにマトリックスじみた世界を作っているのは微妙だと思っていただけにとても納得のいく展開だと思う。

三津田信三「逢魔宿り」その1

2編目がインチキオカルトで微妙な感じ

電子書籍で買ったもんだから、マーカー機能使いまくって読んでいる。

お籠もりの家

もうある種の定型になってる、期間が過ぎるまで結界の外に出ては行けない、返事をしてもいけない系の話。
この家にしても柵にしても何かしら入念な準備が要りそうな割にそこら辺なんも描かないのが凄いな。背景書いても結局リアリティや凄みを与えるわけでもなくこんがらがらせるだけと気づいたのか……。

ある日少年は家から遠く離れた山の中の一軒家になんの説明もなしに連れて行かれる。そして、その家に住んでいた老婆から、7歳になるまでの7日間ここから出てはいけないと言いつけられる…。
が、三日目に結界の外に現れた少年と会話してしまい……。

話はある種の予定調和で終わる。
いやまあ、ここで最後に洒落恐じみた何か入れると破綻するからなぁ。
因縁については全く明らかにならない。
ならないと書いてるだけマシなほうか?

三津田信三最近このパターン多くない?昔から?

予告画

死ぬ前に、自分たちの死に様を予告した絵を描いていた少年少女たちがいるという胡散臭さ満点の『描画心理学双書7原色 子どもの絵診断辞典』という書の紹介から始まる。
でなんか長々と「予知絵」と作品かぶりがあったこととか、『のぞきめ』が映画化したなどの宣伝を交えてようやく本編に入る。

まず、なんか闇芝居っぽくないかコレ?と思った。絵に描いた通りの状態を作り出せるとかもろにコレやん。
にしても、被害に遭った側からの描写として絵に描くとか妙に凝ってんね。普通何の絵か気づかずに放置してたら最後に…ってなりそうだけど。
まぁ、すでに出てるネタかなんか何で一捻り必要と思ったのか。

どうでもいいけど不倫の事実を巧妙に文章に隠すとこだけど、一応口頭で話聞いてるって体裁上これは無理ないかな〜と思ってしまう。まぁ、今更か。人から聞いた実話怪談って体にしたいだけだろうし。あんま効果あげてるとは思えない(胡散臭さの方が勝る)この形式続けてるのは何なんでしょうね。作者が好きだからやってるんですかね。

小林泰三「未来からの脱出」その1

随分と面白いなコレは

DMMで買った電子書籍何個か読んでみたものの、どれも中々先を知りたくなる様なものがなくて、ハズレばっかりだなと思ってたところにコレだったから驚いたね。
やはり小林泰三は他のミステリー作家やなんかと一線を画する何かを持ってるね。コレはSFっぽいけどね。まあ、SFでは比肩する作家はおらんやろうし。

謎の老人養護施設の様なところに入所させられている老人の話。
その施設の状態や、自分が入所した時の記憶が曖昧な事からその施設からの脱出を試みることにする…
日記に隠された暗号から始まり、協力者による脱出用の器具提供から仲間集めまでなかなかスピーディーで面白い。
老人が変なことして騒ぎ起こすって言うと例のドラマ思い出すけどアレ見てるより面白い。

今のところ何とか脱出して真相らしきものが出てきたあたり。
それにしても小林先生は一日一冊も本読めるんか。凄いな