「ドラキュラの客」

新妻昭彦訳(詳註版の方)

ロシアにいる貴族ドラキュラを訪問の旅の途中、ドイツに寄ったついでに廃村を探索していた主人公だが、猛吹雪にあい遭難。吸血鬼の霊廟に逃げ込むが、何か不思議な力で霊廟を追い出され吹雪の中死にかけていたところ、捜索隊が救助される。捜索隊が言うにはあなたを庇う様にオオカミが乗っかっていて、そのオオカミが場所を知らせるように吠えていたため発見が早まったという話を聞く。その後ドラキュラ伯爵からの電報を読み主人公は戦慄するのだった

読んだのは詳註完訳ドラキュラに付いてたバージョン。国書刊行会版ではない。あれ以外で「ドラキュラの客」が読めるなんていい時代だね。
あんな酷い訳の本なのに未だに刊行されている国書刊行会版はなんなんだろう?「『ドラキュラ』長すぎて読むの辛すぎィ!短編版で雰囲気味わいます…」って人が多いのかね。全然ストーリー違ううえにそんな面白いもんでもないのにね

国書刊行会の書籍『ドラキュラの客』は短編集で、「ドラキュラの客」以外にもブラムストーカーの短編が幾つも載っている。が、この短編集の内容どれもそんなに面白くないんですよね。びっくりするぐらい。
「ドラキュラ」はあんなに面白かったのにどうして……と言いたくなる。死後に出版されたらしいけど、ほんとにブラム・ストーカーが書いたのか?
もう一儲けしようと考えた遺族が書いたものじゃないよね?
あるいは単に翻訳の質が悪すぎるの?
桂千穂/訳 はドラキュラ業界に燦然と輝く言葉だろう。悪い意味で


内容としては、ドラキュラの話が始まる前に、ジョナサン・ハーカーがドイツを通過した時の話っぽい感じがする話。
当然ドラキュラ本人は出てこない。ドラキュラ要約を期待して買った人には肩透かしもいいとこだろうなぁ。
この作品ではドラキュラがロシアの貴族という設定になっている。主人公もハーカーではないだろう多分。

初夏のミュンヘン、滞在中のホテルから馬車でドライブに出かける主人公。本日はワルプルギスの夜だということで御者が大分イライラしているが、そんなのにかまわず、途中で見かけた渓谷に寄るという。
案の定御者は今日はワルプルギスの夜だからと反対するが、主人公は歯牙にもかけない。そしてその渓谷にあるものが何かを聞き出す。
何でもそこには村があったらしいが数百年前に村人が何人も死んだが、彼らが埋葬された後にその棺を開けてみると、まるで生きているような状態だったという。残った村人たちはその村から逃げ出し、村は廃村になったという。
馬が怯えてしまったので馬車を先に帰らせ一人で谷へ向かう主人公。しばらく探索していると暗くなりやがて雪が降ってきた。吹雪を避けるための場所を探しているとやがて一つの墓所に行き当たる。
扉の上にはドイツ語で「グラーツのドリンゲン伯爵夫人 1801年 スティリアにて捜索され、死体で発見される」。
墓所には大きな釘を打ち込んだような見た目のものだった。
やがて吹雪がひどくなってきたため、墓所に入ろうとするが、その扉の隙間から、中が見えた。まるで生きているかのような姿の女が棺の上に横たわっていた。
その瞬間謎の稲妻が墓所を直撃し、主人公は謎の力で吹き飛ばされる。更に稲妻が打ち付け墓所は炎上する。謎の悲鳴を聞きながら意識を失う主人公。
再び目が覚めた時にはオオカミが胸の上に載っており、自分の首を舐めているのが見えた。どうにもできずにそのままの体制でいると、やがて捜索隊が表れた。オオカミはまるでここに人がいるというようなことを知らせるように何度か吠えると去っていった。
救助された主人公がホテルについて話を聞いているとオオカミが吠えていたおかげで助かったという。そしてホテルの主人が迅速に捜索隊を派遣できたのは、主人公を招いたロシアのドラキュラ伯爵からの電報があったからだという。そこには、「もし客人に危害が及ぶと考えるならば、一刻たりとも無駄にせぬよう行動されたい」と書かれてあった。
一体、この絶妙なタイミングでこんな電報が来るとはどういうことだろうか。主人公はめまいがした。

うーん。やはり、タイトルから期待できるなにかはないと思われるがオオカミとか女吸血鬼とか使えば、短編映画の一本にでもできそうだね。「デメテル号最期の航海」を映画にするよりこっち映画にした方が早くないか?って気がするのだが、まああちらは単に海洋ホラーやりたくてたまたまネームバリューのあるドラキュラ使ったんだろうなってのがまるわかりだからね。
あるいは、この短編向こうじゃ全然知名度がないのか?あるいはそもそもドラキュラに原作小説があるということを知らないのかもしれない。