夢野久作「瓶詰地獄」(乙女の本棚シリーズ)

文アル刀剣女子狙い撃ち

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

これはありがたい……
これでようやく夢野久作を他人に勧められそうな感じになってきた。
 
どういうわけか、これまで出てる夢野久作の本の表紙は、変に濃いというか、古臭い通り越してもう↓こういう雰囲気じゃないとだめって感じのか、確定してる感がありますよね
瓶詰の地獄 (ビームコミックス)

瓶詰の地獄 (ビームコミックス)

こういう

あの明治初期だか、昭和初期だかの怪奇系カストリ雑誌にでも載ってそうな絵柄はどこが発祥なんでしょうかね?映画ドグラ・マグラのDVDパッケージ?

ドグラ・マグラ [DVD]

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今回今風な絵柄の表紙の絵本風の本が出てくれたことは非常にありがたい・・・・・・
角川文庫版「ドグラ・マグラ」の表紙や、三一書房の表紙に比べたら、まだ自分のイメージに近いですからね・・・
 
夢野久作全集 1

夢野久作全集 1

もう見ただけで手を引っ込めたくなるような表紙をしておる・・・

夢野久作全集〈9〉 (ちくま文庫)

夢野久作全集〈9〉 (ちくま文庫)

ちくまのもかなり奇っ怪なものが多い。

まあ一番影響大きいのは角川文庫のでしょうね・・・

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)


昨今のDMMゲーマー向けの一過性のブームだとしても、こういう方面のが出てくれるのはありがたい・・・。夢野久作は内容よくても、表紙の不気味さにドン引きして買わない層が絶対いると思うんですよね


イラスト

イラストレータ刀剣乱舞のキャラ立ち絵の絵師。とはいえあれの絵師の名前あんま詳しくないので誰を担当してるのかは分からない。小烏丸あたり?
「文豪とアルケミスト」の方じゃないのか……(困惑)*1まあ……絵師のセレクト自体はかなりマッチしてるから全然OK。
関係はないですけど似たような感じの女子向け夢野久作短編集「ユメノモレスク」見てなんかガッカリしてたので、どうせ表紙だけ今風何だろとか思ってたがなかなかいい感じ。
「なんで、服破けて裸体になってしまったって書いてあるのに服着てんだよ?」みたいな突っ込みはしてはならない……(何故冒頭で2人とも学生服を着ているのか?みたいな突っ込みも)
こういう絵柄なら、「ドグラマグラ草稿」とか、「あやかしの鼓」でも行けそうな雰囲気してますよ。何故若干エロスなこの作品を選んだのか……
このイラストレータ白髪好きそうだから、この勢いに乗って白髪小僧の出たりしませんかね?分量的に無理か……長すぎる……

内容

内容に関して言うと、この話こんなに読みづらかったのか……と言いたくなるくらい漢字に対して難解なルビが振ってある。ルビに対してやたら難解な漢字を使っていると言うべきか……。ここら辺も割と絵柄とあってる感しますね。

表紙とかイラストに十字架出過ぎじゃない?と思ったけど、聖書出てるし話自体がアダムとイブの話モチーフにしてるしでバリバリメンヘラ系中二に受けそうな内容してるわ。この話をセレクトしたのはそういう理由が……

まあ、そもそも「夢野」という名字からして、自己投影型アマチュア小説愛好家にありそうなペンネームしてますもんね………。

*1:出版されたのは、文アルで夢野久作出る前らしい

松本ヒサオ「続・白髪小僧」その1

頭おかしなるで

夢野久作の名作「白髪小僧」の続編の体をとった白髪小僧の二次創作作品。
当然作者は夢野久作とは別人。
そんなに内容には期待していなかったのだが、読んでみると思ったよりもおもしろい……。
目次から「白髪小僧」の目次を入れておいて「ここまでは白髪小僧でお読みください」といった念の入りよう。

白髪小僧をリフレインしているような内容で、本「白髪小僧」がここでも出てきて、青眼先生がミルメ姫に聞かせる話の内容として出てくる。しかもその本の内容が、我々の知っている「白髪小僧」と同じ………と思わせておいて微妙にちがう。そんな読者を混乱させる入れ子構造がさらに一つ上位階層にあるはずの白髪小僧の話を取り込んでいて、あたかもウロボロスの蛇のような様相を呈している。
さらには文体まで念入りに特徴を出していて、読者を幻惑させてくれる。まるで本当に白髪小僧の続編を読んでいるような……。でも本当の作者ならばコンナ話にはならないであろう……という思いがさらに戸惑いに拍車をかける。そんな恐ろしい話でゴザイます……

「最後にして最初のアイドル」その1

ラブライブ!版「銀河帝国の弘法も筆の誤り」

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

表紙見て、「これはSFオタクがまた騒ぎ出すな……」と思って手に取ったのだが、
さすがに早川書房からでてるだけあって、凡百のなろう系ライトノベルとは違って読みやすい。
おまけにアイドル目指してる主人公が、もう一人の登場人物の手によってグロテスクな異形の「アイドル」になってしまうあたりは、「ビアンカオーバースタディ」ぽくもある。
「表紙は流行りの萌えキャラなのに、本編ではそのキャラがグロテスクな姿に変わり果てている」という、「萌えオタ表紙釣り」の典型的な代物で、これなら最近の絵柄を嫌ってるSFオタクたちもニッコリな内容だな。
と思っていたのだが……

なんとこれ、ラブライブ!の二次創作として出したものを改稿したものらしい。つまり主人公の幼児体型ツインテール少女はにっこにっこにーのアレで、それに異常な愛情を注ぐ少女は西木野真姫らしい。(ヴェエとか特に言わないけど)
正気かおまえ。
なんとなく読んでるうちは文体含めてもろにSFらしさを全面に押し出してるせいか(でも古くささは感じない)、「銀河帝国の弘法も筆の誤り」みたいなパロディなのかと思ってたけど。まさか本家本元のファンだったとは…。
え……正気なん…?これをラブライブ!の二次創作として出してた?そんなジャンルだったっけあれ?
よく許されたな……。

内容として見れば、表紙の割に読みやすいふつうのSF。いや、文体からもう、SFっぽさが出まくりなので、ラブライブ同様、SFのパロディとして書いてるのかもしれない。神林からの評価低いのもそこら辺あるかもしれない。
なんかSF部分の解説部分が変にわかりにくくて、SF書くのになれていないように見えるから、SFのパロディっぽい印象受けるのかもしれない。

うん。ていうか、そうなると表紙は表題作の子ではないな。にこは黒髪ツインテールだしな。(どうでもいい)

「書架の探偵」その2

案の定依頼人が怪しくなってきた

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

警察やらなんやらに捕まって情報聞いていくうちにコレットがどうにもこうにも嘘を付いていたことがわかってきたようだが。
なんというかこれはコンラッドコレットである可能性もでてきたな。
コレットが胡散臭い点については、割りと初期の描写からもわかるが。指定していた人物しか入れないマンションに強盗入って来たとか。セキュリティシステムにハッキングした可能性があると言っていたがミステリ的に考えるなら可能性は低い。大体そんな手があるならコブを殺す意味がない。

それにしてもなんか読み逃していた情報が、あとでぽっと出てくるのが面倒。
慈悲深きメイド社とか、アラベラとか。アラベラはP44で急に名前出てきたと思ったらアーンの元妻だったらしい
面倒なので初登場のページを載せておく

  • アラベラ・リー P23
  • 慈悲深きメイド P44
  • べティーナ・ジョーンズ P44

コンラッドコールドブックシニアが生きているというのはどういうアレなんでしょうね。クローン?それとも死んだふり?
警察側はシニアが死んだとか言ってたかな。
シニアがハゲだったって本当か?逆にフサフサである描写なんかあったか?
屋敷に火星の本隠した描写がどこにあるのかが見つからないのでなんとも気持ち悪い。
それにしてもこの主人公は何でこんな怪力あるんかね。

「梅原北明探偵小説選」その1

う行の作者の辺りでぶらついてたら見つけた本

特急「亜細亜

スパイ小説と思わせといて、戦意高揚作品。なんか途中で路線変更した挙句打ち切りになったような唐突さで終わる。
前半のロシアで起こった殺人事件と、それがやがてスパイ合戦まで拡大していくさまは面白かったが
日本人女給の並木のエピソードあたりからつまらなくなってゆく。スパイ本を読んだ女給がロシアから逃亡した赤軍将校と丁々発止の騙し合いでもするのかと思ったら、謎の設計図を手に入れたあとは、恋慕する並木大尉に知らせるべく、噂を聞いては満州やら上海やら出かけるがいつも一足お先に旅立っているというね。なんともフラストレーションのたまる展開に。
戦地をあっちへ行ったりこっちへ飛んだりしているあたりは何か、日本の大陸における勢力図を国民に知らせるために書いてる従軍小説みたいな感じがしてくる。
結局逃亡したウドーベンはどうなったんだ?とか
逃亡先を上海と目を付けて向かったペトロウェッチェは何してんの?とか
色々と疑問は残る
だいたい暗号文書を写真に撮らせたみたいなこと書いてあったが、あれあぶり出しの図面でしょ?全部あぶり出したの?

「誰の息子でもない」

案の定よくわからん話だった

アバターを作ってそれを使ってネット上で調べ者をしてもらうというアレ。どっかで聞いたな。原点としては「帝王の殻」のあの棘ボールかな。最近のでは、「夢見る猫は〜」(八杉)にあった気がする。

耳につけるネットカムコムという道具を使って、ネットに接続し同時に自身の性癖やらをアバターに同期させている。というものらしい。
でこのアバターは使用者の脳の一部の領域を使用して存在しているのではという疑惑が生まれている。実際はネット上で存在しているが、アバター使用中に活動している脳の領域が、ネット切断後も活動し続けているかららしい。死者のアバターが現れたことから何故かこの理論が現実味を帯びてくる。
しかし二章になるとそんなのできるのは主人公だけってことになってる。

主人公は市役所で、死んだ人々が生前作っていたアバターを削除する仕事についている(管理会社に何か問い合わせるとかはしないらしい。直接アバターとコンタクトを取って消すらしい。そもそもどこの会社がこんなシステム作ったのかは語られていない)。上司の母親のアバターが現れたと相談を受けた直後、自分の前にも自分と母を捨てて死んだはずの父親が現れる。勿論それは父親ではなく父親のアバターらしいが、前述の理論に寄り、現実空間に実体となって存在しているように見えている(主人公にとってはだが)。(頭の中にアバターが存在して脳の領域使用して語りかけているってなんとも気持ち悪いな。というか、存在しているとしてもそれを現実の実体として感じるなんてことはあり得るのか?)
結局その父親を病床の母親のところに連れて行って合わせるが、そしたら今度は実体の母親(アバターの方ではないと言う意味。母親はしゃべれないので大抵のコミュニケーションはアバターで行っているらしい)の方から、自分が息子ではなく、単なる市役所の人と認識されていると言う事実に驚愕する。ボケているのでは?と言うツッコミに対してはボケていないと言う主人公の弁明が入る。
このあと更に、父親のアバターから、お前は息子ではなく息子のアバターだと告げられる。
ここでこの主人公は実は誰かの体の中に入り込んだアバターなのでは?という疑惑が生じる。自分の体だと思いこんでたら他人の体でそのまんま自分の母親の面会に行っていたのでは?と考えれば話は通るが、あとの話で単なる認知症だった事になってる。
結局市役所の電算室にバズーカ打ち込めば解決すると父親のアバターにそそのかされて実行するが、別に解決はせずに父親のアバターは勾留中の主人公の頭に巣食っている。

御子

逮捕されたあとなんやかんやあって、情報部のKとネット上の死者のアバターを作り出している宗教法人?の殲滅と、アバターを作り出せる御子をどうにかする仕事をする羽目になる。
肝心の電算装置が金庫にあるとかで金庫破壊して終わったと思いきや、御子は何故か主人公の脳内に生きていて、主人公が何か細工して勾留所のドアにドアノブ追加してそこから脱出させることで消滅させたらしい。
え何どういうこと?と思われるかもしれんが俺も読んでて何がなんだか意味がわからなかった。ビジュアル的なイメージはわかるがなんでそれで消えるのかは謎。

誰の息子でもない

待遇は良くなったままなのに、相変わらず拘置所ぐらしの主人公。今度は温泉で無のアバター退治をすることになった。
誰でもないアバターが存在しているそうなのでそれを退治する。やり方は口に含んだ酒をふりかけて、ふりかけたやつそっくりになったところを物理的に破壊する。なんでネット上の存在のアバターをグーで殴って殺せるのかは不明。特殊能力持ちの主人公だけができるってわけでもなくKも出来る。ここらへん本当何やってるか不明。大体どこで行われてるんだこのネズミ退治。
ネット上のカオナシアバターをおびき寄せてたとか言ってたが。温泉宿にネット接続環境あるんだろうか?ネットに接続してない人から見たらこの二人、裸でエア空手繰り広げているように見えるのだろうか?
なんだかんだやって結局野ねずみがこのアバターの正体と分かって、Kの組織はネズミ退治を始めたそうな

で父親のアバターはここに至って完全消滅する。正体は母親の作り出したアバターだったらしくて、母親の打ったオーデン改により消滅した。(なんで?)
そういえば何で実体のないアバターを殺すのにオデン改が必要なんだろ。


変に思索的なのはいいんだけど親父のアバターの説教臭いのにはうんざりしてしまった。ファンだったら「『ウザい親父』を体現させるためにこんな風な言動をさせていて、君がそう感じるのなら、作者の意図は見事に成功している」などと宣うのだろうか。
原発事故と9.11に着想を受けていることは明らかで、当時東京に住んでいただけにこの手のやつはいい加減ウンザリしつつある。あの当時東京で何かが変わったかと言われると結局何も変わらなかったことは明らかなので。シンゴジラも9.11の影響度高そうだし。
主人公が父親のアバターに対して「時代が違うんだよ」と言わせてるあたりも、作者も年食ったなと思わせる作品。

とは言えまともに読み終えられたんだから、過負荷都市やらライトジーンの遺産なんかに比べるとだいぶマシな作品と言える。
「鏡像の敵」の一個上ぐらいか

「なんでもない一日」シャーリイ・ジャクスン その1

初心者向け

なんでもない一日 (シャーリイ・ジャクスン短編集) (創元推理文庫)

なんでもない一日 (シャーリイ・ジャクスン短編集) (創元推理文庫)

スミス夫人の蜜月(バージョン1)

シャーリイ・ジャクスンの割に分かりやすくて面白い。逆にあっけないぐらいだが。

買い物に行ったところ近所の住人から変な目で見られて、隣人からも警告を受けるスミス夫人。理由は最近結婚した夫のことについてだった。3x歳にて未だに未婚だった夫人は、スミス氏との出会いによりこの度結婚することになったのだが。隣人は彼女の夫は、かの新聞に乗っている、妻を殺害している殺人鬼ではないのか?というのだ。
顔や、現場となった家と二人の新居となる家は似ているが、3x歳にて初めての結婚という事態に浮かれる新妻は、そんな隣人の警告には耳を貸さない
そして夫が帰ってきて、いまからその新居へ行こうと提案したところで話が終わる。

ええ、これはかなり分かりやすい話ですね。完成度高いというか、むしろ何でこれでバージョン2を作る必要があるのか?と思うくらい分かりやすい。
一体これ書いたのはいつごろで、なんでバージョン2にしたのか?と言うところが気になるところですね。ありがちすぎて、ウケなかったのか……?

スミス夫人の蜜月(バージョン2)――新妻殺害のミステリー

上記のバージョン2。こっちはいつものシャーリイ・ジャクスン。つまりなんかわかりにくい。
結局、殺そうとしていたのは夫側ではなく主人公側だったのか?それとも、殺されたがっていたのか?