「誰の息子でもない」

案の定よくわからん話だった

アバターを作ってそれを使ってネット上で調べ者をしてもらうというアレ。どっかで聞いたな。原点としては「帝王の殻」のあの棘ボールかな。最近のでは、「夢見る猫は〜」(八杉)にあった気がする。

耳につけるネットカムコムという道具を使って、ネットに接続し同時に自身の性癖やらをアバターに同期させている。というものらしい。
でこのアバターは使用者の脳の一部の領域を使用して存在しているのではという疑惑が生まれている。実際はネット上で存在しているが、アバター使用中に活動している脳の領域が、ネット切断後も活動し続けているかららしい。死者のアバターが現れたことから何故かこの理論が現実味を帯びてくる。
しかし二章になるとそんなのできるのは主人公だけってことになってる。

主人公は市役所で、死んだ人々が生前作っていたアバターを削除する仕事についている(管理会社に何か問い合わせるとかはしないらしい。直接アバターとコンタクトを取って消すらしい。そもそもどこの会社がこんなシステム作ったのかは語られていない)。上司の母親のアバターが現れたと相談を受けた直後、自分の前にも自分と母を捨てて死んだはずの父親が現れる。勿論それは父親ではなく父親のアバターらしいが、前述の理論に寄り、現実空間に実体となって存在しているように見えている(主人公にとってはだが)。(頭の中にアバターが存在して脳の領域使用して語りかけているってなんとも気持ち悪いな。というか、存在しているとしてもそれを現実の実体として感じるなんてことはあり得るのか?)
結局その父親を病床の母親のところに連れて行って合わせるが、そしたら今度は実体の母親(アバターの方ではないと言う意味。母親はしゃべれないので大抵のコミュニケーションはアバターで行っているらしい)の方から、自分が息子ではなく、単なる市役所の人と認識されていると言う事実に驚愕する。ボケているのでは?と言うツッコミに対してはボケていないと言う主人公の弁明が入る。
このあと更に、父親のアバターから、お前は息子ではなく息子のアバターだと告げられる。
ここでこの主人公は実は誰かの体の中に入り込んだアバターなのでは?という疑惑が生じる。自分の体だと思いこんでたら他人の体でそのまんま自分の母親の面会に行っていたのでは?と考えれば話は通るが、あとの話で単なる認知症だった事になってる。
結局市役所の電算室にバズーカ打ち込めば解決すると父親のアバターにそそのかされて実行するが、別に解決はせずに父親のアバターは勾留中の主人公の頭に巣食っている。

御子

逮捕されたあとなんやかんやあって、情報部のKとネット上の死者のアバターを作り出している宗教法人?の殲滅と、アバターを作り出せる御子をどうにかする仕事をする羽目になる。
肝心の電算装置が金庫にあるとかで金庫破壊して終わったと思いきや、御子は何故か主人公の脳内に生きていて、主人公が何か細工して勾留所のドアにドアノブ追加してそこから脱出させることで消滅させたらしい。
え何どういうこと?と思われるかもしれんが俺も読んでて何がなんだか意味がわからなかった。ビジュアル的なイメージはわかるがなんでそれで消えるのかは謎。

誰の息子でもない

待遇は良くなったままなのに、相変わらず拘置所ぐらしの主人公。今度は温泉で無のアバター退治をすることになった。
誰でもないアバターが存在しているそうなのでそれを退治する。やり方は口に含んだ酒をふりかけて、ふりかけたやつそっくりになったところを物理的に破壊する。なんでネット上の存在のアバターをグーで殴って殺せるのかは不明。特殊能力持ちの主人公だけができるってわけでもなくKも出来る。ここらへん本当何やってるか不明。大体どこで行われてるんだこのネズミ退治。
ネット上のカオナシアバターをおびき寄せてたとか言ってたが。温泉宿にネット接続環境あるんだろうか?ネットに接続してない人から見たらこの二人、裸でエア空手繰り広げているように見えるのだろうか?
なんだかんだやって結局野ねずみがこのアバターの正体と分かって、Kの組織はネズミ退治を始めたそうな

で父親のアバターはここに至って完全消滅する。正体は母親の作り出したアバターだったらしくて、母親の打ったオーデン改により消滅した。(なんで?)
そういえば何で実体のないアバターを殺すのにオデン改が必要なんだろ。


変に思索的なのはいいんだけど親父のアバターの説教臭いのにはうんざりしてしまった。ファンだったら「『ウザい親父』を体現させるためにこんな風な言動をさせていて、君がそう感じるのなら、作者の意図は見事に成功している」などと宣うのだろうか。
原発事故と9.11に着想を受けていることは明らかで、当時東京に住んでいただけにこの手のやつはいい加減ウンザリしつつある。あの当時東京で何かが変わったかと言われると結局何も変わらなかったことは明らかなので。シンゴジラも9.11の影響度高そうだし。
主人公が父親のアバターに対して「時代が違うんだよ」と言わせてるあたりも、作者も年食ったなと思わせる作品。

とは言えまともに読み終えられたんだから、過負荷都市やらライトジーンの遺産なんかに比べるとだいぶマシな作品と言える。
「鏡像の敵」の一個上ぐらいか