ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」その2

読了

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

やっぱりそうなるか…というシーンで終わりましたね…まあ、そうなるな。

リーマスの作戦通り、東ドイツのスパイ・フィードラーは、リーマスからの聞き取りによりムントに対する疑惑を固めていく。
いよいよムントに対する起訴状を出せるという直前、リーマスとフィードラーは、ムントの部下たちに拘束される。尋問中、彼らの作戦はムントに筒抜けだった事を知るリーマス
このまま尋問にが続くと思われたが、突然尋問部屋にやってきた兵によって尋問は中断され、ムントは拘束される。実は逮捕された当日、フィードラーは委員会へムントの逮捕を請求していた。そして数日たった今やっと評議会が動いたのだった。
危ういところで危機を脱したリーマスだが、ムントの容疑を審査するための裁判が行われるためその証人として法廷に出席する。流れはフィードラーの優勢に傾いていたように思えたが、ムント側の証人が呼ばれる。そこに現れたのはリーマスがかつてロンドンで関係を結んだゴールドだった。
弁護人の尋問により、ロンドンでの不自然な出来事の数々を喋ってしまうゴールド。これにより弁護人は一連の事象はムントを失脚させるためにCIRCUS側が仕掛けたものであり、その主犯はリーマスとフュードラーであるとの弁論を展開する。すべてが白日のもとに晒され、ゴールドを人質に取られた格好になったリーマスは、計画のすべてを話した。
裁判は一転攻勢、ムントの勝利に終わる。そしてムントのその表情を見た瞬間、リーマスはこの作戦の本当の目的を知るのだった……。

いやー、流石。一筋縄ではいかないストーリーでしたね。やっぱりそう簡単に終わらせない。

「ユナイテッドステイツオブジャパン」その2

南京大虐殺に関する記述があってなんとも微妙な気持ちになりながらも読んでおります。ヘタするとこの部分の描写だけで全体駄作認定されかねないな…。なんとなく作者が韓国系アメリカ人って時点でなんか嫌な予感はしていたのだがやはり…。


ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

GW団に拷問受けたあとは若名将軍の過去話。そして六浦賀(ムウ・ラ・フラガが元ネタかな?)と石村紅功の関係も明らかになる。
大阪弁パイロット久地楽の操るメカ「ハリネズミ1号」も登場。人の顔をしているっぽいのでなんとなくジャイアントロボが思い浮かぶ。赤いラインは入っているし、乗り込むのにわざわざ梯使ったり。久地楽は何か女性パイロットと聞いて綾波みたいなのかと思ってたら思いっきり大阪弁である。なんぞこれ。
そんなロボットパイロットいましたっけね…。

「ユナイテッドステイツオブジャパン」その1

その名は、合衆国日本!

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

早川の銀背の割に面白いな。通常避けられる傾向のあるSFの中でも特に人を選びそうなレーベルだと思ってたが。
イラスト的にパシフィックリムみたいなのかと思ってたけど、中に出てくるロボ「メカ」は、どっちかというと鉄人28号っぽい。なんせ第2次世界大戦中に使われて、日本の勝利を決定づけた機械らしいので、時代を考えるとそのあたりかなぁと。
内容意外に面白くて「高い城の男」よりちゃんとエンターテイメントとして優れている感じがするね。まあSFにエンターテイメント?って感じではあるが。
メリケンの書いた変な日本人と違ってちゃんと日本人らしい日本人が描けてるのも流石。というかまあ、この作者韓国系の人らしいからそれでかな。
登場人物が現代の日本人らしいかって言うとまあ、違いますがね。違った歴史上のだから違うの当たり前だけどね。
うーん。なんというのかな。メリケンの小説はメリケンにしか通用しない風俗みたいなのあるけど、そういうのが極力ないのよね。日本占領下だから当たり前だけど。
本当に外国人が書いてんのか怪しむレベル。一応早川が出してるからニンジャスレイヤーみたいな嘘外国人の作者が書いたものでは無いことは保証されてるはずだが。

まあ、なんだ。「イーガンやチャンはわからなくても、この話は分かります」て帯が一番ふさわしいな。
最近SFが気になってる人は、グレッグ・イーガンテッド・チャンも読まなくていいからこれを読もう。SFが分かった気になれるかは分からないが。(アシモフハインラインも読まなくて良いんじゃねぇかな……)


1984年、原爆はアメリカに投下された。日本の人型兵器「メカ」と原爆により勝利を収めた日本。アメリカは分割統治され、東はドイツ、西は日本の支配地域となった。そして日本の支配地域は「ユナイテッドステイツオブジャパン」と呼ばれた。
そして40年後。ゲームプログラマーで、検閲官の石村紅功は、かつての上司六浦賀将軍から、その娘のクレアが死んだことを知らされる。

出てくるギミックとして面白いのは「電卓」。物語のメインの時代である1988年では既にスマホと同程度の機能を持っている。なおインターネットに類するものは「機界」と称されている。電話からの進化じゃなくて、電卓から進化したという系統のものだから名前が電卓のまんまなんだろうか?日本人が小型化したってことだからその名前持ってきたのか

「さあ、気ちがいになりなさい」文庫版が登場

なぜ、このタイミングで…?

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

なんにせよ新装版の異色作家短編集が絶版になってからしばらく経つし、肝心の異色作家短編集自体も高いのでこれは朗報だろう。

ついでに嘲笑う男も文庫本にしてくれませんかねぇ……
嘲笑う男 (異色作家短篇集)

嘲笑う男 (異色作家短篇集)

ジョン・ル・カレ「我らが背きしもの」その1

「寒い国から~」も読み終わってないうちから次の読むのか…

われらが背きし者

われらが背きし者

2017年に映画公開予定とかなんとか、そんな話を聞いたので。
しかし、「裏切りのサーカス」の次の作品やるのかと思ったらこれ全然違うっすね。
場面がコロコロ切り替わるのがなんか読んでてすごく面倒くさい‥‥‥。こういう、取調中からちょっと過去の出来事をフラッシュバックさせつつ話をすすめるって手法は映像作品だと分かりやすいけど、文字だけの小説でやられると凄い面倒くさい。
映画化前提の作品なんだろうか。「オペレーションローズダスト」並に読みにくい。そういやローズダストって結局映像化も何もしなかったね‥‥‥。まあ、話自体がクソつまらんかったからな‥‥‥



われらが背きし者 (岩波現代文庫)

われらが背きし者 (岩波現代文庫)

ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」その1

ジョーカーゲームより面白いスパイ小説

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

うーん。スパイ者が流行るわけだな。こんな面白い小説があったとは思わなかった。
正直スパイ小説ってアシェンデンかジョーカー・ゲームしか読んだことなかったんで。
アシェンデンは読んでて地味すぎて退屈だし、ジョーカー・ゲームはまあ、話が短いし余韻も何も残らない。ていうか「これ日本でやる必要なくね?ていうかこの時代設定である意味は?」と思うくらい特色がない。スパイが事件解決して「日本のスパイスゲー」ってなってなるだけ。中身何もねぇ。何でこんな優秀なスパイがいたんなら何で日本戦争に負けたんだよって話になるしな。

作者は「裏切りのサーカス」の原作「ティンカーテイラーソルジャースパイ」の作者ジョン・ル・カレ。まあ、映画自体は雰囲気いいし推理劇ぽいところがあるので好きではあるが、なにやってるかわかりづらい。
その点こっちは一人のスパイの視点から描かれているので結構分かりやすい。

ドイツがまだ東西に別れていた頃、CIRCUSが東に送り込んでいたスパイがドンドン始末されていった。これがとある新任のスパイマスターの仕業であることがわかったイギリス諜報部は、こいつを失脚させるべくとある作戦を実行に移す。それは、東ドイツ担当だったスパイの元締めである主人公を、イギリスを裏切ったスパイとして東ドイツに雇わせ内部から崩壊させるというもの。
手始めに、主人公を実働班から内部の事務職へ移させ、そこで横領を働いたということでクビにして退職金も出ないままおっぽり出させる。新しい職を探すがどれも長続きせず貧乏長屋ぐらしをする主人公。そしてそんな貧乏暮しをしていたところに東ドイツ側のスパイが接触してくる。という展開。主人公は新任のスパイマスターの対抗馬をそそのかして失脚させるのが目的。

ジェイムズ・ティプトリーJr「あまたの星、宝冠のごとく」

まだ読み始め

原題:CROWN OF STARS。直訳したら「星の冠」
えらい凝った邦題にしたもんだな

「愛はさだめ、さだめは死」、「輝くもの天より墜ち」なんか割とそのまんまなのに…。
(それぞれ"Love Is the Plan the Plan Is Death","Brightness Falls from the Air")