P.K.ディック「地図にない町」その1

地図にない町 - ディック幻想短篇集 (ハヤカワ文庫 NV 122)

地図にない町 - ディック幻想短篇集 (ハヤカワ文庫 NV 122)

いやもうなんと言うか…。何でこんな星新一以下の短編集なんぞ出したんだろうと言いたくなる出来ですなぁ。なんか分かったふりして意味のわからないものをやたらと賛美しまくる中学生でも読まない気がする。
新潮文庫のディック短編集は元より現在早川から出てるディック短編集と比べても糞としか言いようのない出来。何考えてこんな駄作ばっか並べたんだろう。編者のセンスを疑う。
どことなく星新一を連想させる表紙もまた酷いよね。絶版なのも止むなしかなと言う出来。

おもちゃの戦争

トイストーリーの本格的な領地戦争的な。
具体的に何?って言われると説明に困る。
おもちゃの兵隊が子供たちに買われて、その家の他のおもちゃを支配下に置いて部屋を占拠しようとしたらうさぎと豚のおもちゃに返り討ちにあった話。なお、他で進めていた侵攻計画も潰された模様。
だからなんなの?としか言いようがない……。この本を手にとった約半数がここで読むの辞めると思われる意味のない作品。なぜこんなくだらないものを冒頭に…?


薄明の朝食

ある日アメリカの平凡な一家が五年後の戦時中の未来へ飛ばされてしまった話。
まあ、教訓的な。ソ連出て来るあたり冷戦元にしてるのか?異様にピリピリしてた時代だったんでしょうなぁ。戦争始めた当事国が何を言うという感じしかしないが。

レダと白鳥

飼ってる白鳥に奥さん寝取られた話。
ホントにそれ以外に説明のしようがない。その白鳥の正体が実は地球外生命体だったとか、ゼウスの化身だったとかそんな説明はなんもない。ただ息子が虫食ってるのを見てそう確信したというだけで、落ちに衝撃はない。

森の中の笛吹き

人間が精神的に植物になって光合成しようとする話。
と言っても別に植物状態になるというわけでもない。自分を植物に例えて一日中日向にいたり部屋に土撒いて寝そべったりするというだけ。しかし仕事しなくなるので困った駐屯地の司令官が精神科医に調査を依頼したところ、案の定その精神科医も植物した模様。しかし原因があんまりにもはっきりしなさすぎて、最後に医者が土撒いて寝そべっても、別に衝撃的でもない。「まあ、そうなるな」という感想しか思い浮かばない

輪廻の豚

豚型異性体を食ったら精神乗っ取られた話。
殺す前に目を見つめた段階で精神転移したのか、食った事で転移したのかは不明。

超能力者

戦争後にシェルターの中で安全に暮らす人間と、廃墟に住む治癒能力者、時間遡行者、予知能力者、念動力持ち、テレパスたちの話。自分たちなら普通の人間よりうまくやれるとか言うけど、結局超能力者同志でもいざこざ起こしてる
しかしまあ、本土空襲もされた事のない国の人間がこんなの書くとかちょっと神経過敏過ぎないですかね?どうもディックの最終戦争論は聖書的過ぎて理解しがたいね
別に冷戦を例に出すまでも無く、この手の終末思想は別に珍しくもなさそうだし