蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション(8) (角川ホラー文庫)
- 作者: 江戸川乱歩
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/09/25
- メディア: 文庫
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蜘蛛男というと「飛べイサミ」のスパイダーマンもどきの怪盗のイメージがあったがまあ読んでみると別物ですわな。
漫画「江戸川乱歩異人館」にも蜘蛛男の話は出てくるが、畔柳博士はあそこまであからさまな怪しい人物ではなくむしろ正統派探偵然としているキャラクターとして描かれている。
話自体はなんとなく幻惑的ではあるがトリック自体は実現可能な雰囲気のものが多く、「蜘蛛男」のタイトルから受けるゲテモノ臭はそれほど感じられない探偵小説になっている。
こんだけ出来のいいエンタテインメントなのに「黄金仮面」はどうしてああなったんだと言いたくなる。他の江戸川乱歩作品にあるエログロ怪奇趣味はあんまり無いので結構まともなミステリーに見えないこともない*1。
あとまぁ、江戸川乱歩にありがちな話としてめっちゃアンフェアなことしてます。そう、地の文で嘘ついてます。これが問題にならない時代だったんですね。今だったら糞のレッテルはられてポイですわ。
冒頭、謎の男に攫われ陵辱された後殺される女。突如現れて煙の様に消えた美術商と配られた彫刻。
そして、浪越警部の友人にして犯罪研究家の畔柳博士が登場。謎の美術商の出した広告から謎の匂いを嗅ぎつけたのか捜査に乗り出す。
畔柳博士はなんとなくシャーロック・ホームズ的な正統派探偵を彷彿とさせるようでなかなかこの人が犯人とは思われないのだが、突如現れた明智によってそれまでのあからさまな伏線が回収される。
色々謎なのは、そもそも畔柳博士がどうやって収入得てるのかという話。
あと浪越警部とどうやって知り合ったんだっつー話。なんだかんだで友情築いてたのに、明智が帰ってきたと知った途端畔柳を切り捨てる浪越警部の心情。
畔柳博士の解決した犯罪とやらは結局自作自演だったんならいったい犯人は誰だったんだ。
蜘蛛男 江戸川乱歩ベストセレクション(8) (角川ホラー文庫)
*1:「大暗室」や「盲獣」とくらべての話