夢野久作「死後の恋」

解釈としてはお化けとか幽霊落ちなのかね

死後の恋 (立東舎 乙女の本棚)

死後の恋 (立東舎 乙女の本棚)

  • 作者:夢野 久作
  • 出版社/メーカー: 立東舎
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本

落語調なせいか「あっ、消えた」とか「こんな顔だったかい?」みたいな落ちにしか思えんのだが…‥イラストもなんかそんな感じだし…‥

同シリーズの「瓶詰地獄」の方はいろいろ新しい発見者有ったから買ってみたけど、今回は特に新しい解釈とかは見つからなかったな‥…

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)


話としては落語風な語りで、語られるとあるキチガイの体験談。
話としては、一緒に軍隊にいて仲良くしてた奴が実は女だったんだけど真相知ったのが、その女が敵軍にレイプされて殺された後だったという話で。
いわゆる、おまおんNTR
結局、死後の恋とか言ってるのは膣に撃ち込まれた石ころを宝石と勘違いして後生大事に持ってるあたりかね。
最後のやりとりからしても宝石ではないっぽいよね。実際のところは友人がレイプされて殺された死体を見てしまった辺りで気が狂ってしまったのでは?

追記

今のタイミングで「死後の恋」出したのは何でなんだろう?もしかしてFGOでアナスタシアが出たからか?とちょっと考えたが、元々有名タイトルなんで「乙女の本棚」にぴったりだと思ったに違いない。中身はあれなんだが……

ところで最後の
「ああッ……
アナスタシヤ内親王殿下……。」
だが、最初読んだときは「え?誰?」「なんか急に知らんキャラの名前が出てきた」「誰だよアナスタシア内親王殿下って」となったのだが、
とある解説によると、アナスタシア皇女のことらしい。
ja.wikipedia.org
最後のロシア皇帝ニコライ2世の娘で要するに第4皇女。最後は革命軍によって家族揃って銃殺されたという。
が、どういうわけかアナスタシアだけは処刑を免れ生き残ったという「伝説」が生まれてしまったそうな。
夢野久作はこれに感化されたのか「氷の涯」でアナスタシアが処刑を免れ、愛人の日本人将校と氷の海を渡って日本へ向かったという筋の話を書いている。
からしてみるとアホかとしか言いようがないが、その当時にはさも本当らしく語られていたのでしょうね。だから、現代人からするとナンノコッチャと言いたくなる話なんだが、こういう話はおそらく当時としては誰もが知ってた流言飛語の類だったという背景を知っとかないと今回のもわけが解らなくなる。
つまり今回の「死後の恋」でも同じように、アナスタシアは家族の処刑前に秘密裏に軍隊に入れられ男として生活していた。という説で話が進んでいるのだと思われる。
作中出てくるリヤトニコフが、ニコライ廃帝一家が全員殺されてしまったというニュースを聞いて涙しているというのはそういうことなのだろう。
主人公が「まさかに、それ程の身分であろうとは夢にも想像していないのでした」と思うのも当然はある。
おそらく流れとしては、最後に「ああッ……アナスタシヤ内親王殿下」と出すことでリヤトニコフがアナスタシアであったという落ちにしたかったんではないかと思われる。

ちなみに、「ドグラ・マグラ」には「自分を女王だと思いこんでいる精神異常者」が出てきますね。

とは言え、作中ではニヤトリコフ=アナスタシアとは明確に記載はされてないワケで、本当に死んだのがアナスタシアかどうかは怪しいところ。夢野久作が「瓶詰の地獄」で用いたような叙述トリックである可能性も考えられるから、ニヤトリコフはアナスタシアとは関連の無い人物である可能性も十分にある。
じゃあ、最後のアナスタシア内親王殿下は?
おそらく語り部が言っていた「日本軍人」なる人物がアナスタシアだったのではないだろうか