ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」その1

ジョーカーゲームより面白いスパイ小説

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

うーん。スパイ者が流行るわけだな。こんな面白い小説があったとは思わなかった。
正直スパイ小説ってアシェンデンかジョーカー・ゲームしか読んだことなかったんで。
アシェンデンは読んでて地味すぎて退屈だし、ジョーカー・ゲームはまあ、話が短いし余韻も何も残らない。ていうか「これ日本でやる必要なくね?ていうかこの時代設定である意味は?」と思うくらい特色がない。スパイが事件解決して「日本のスパイスゲー」ってなってなるだけ。中身何もねぇ。何でこんな優秀なスパイがいたんなら何で日本戦争に負けたんだよって話になるしな。

作者は「裏切りのサーカス」の原作「ティンカーテイラーソルジャースパイ」の作者ジョン・ル・カレ。まあ、映画自体は雰囲気いいし推理劇ぽいところがあるので好きではあるが、なにやってるかわかりづらい。
その点こっちは一人のスパイの視点から描かれているので結構分かりやすい。

ドイツがまだ東西に別れていた頃、CIRCUSが東に送り込んでいたスパイがドンドン始末されていった。これがとある新任のスパイマスターの仕業であることがわかったイギリス諜報部は、こいつを失脚させるべくとある作戦を実行に移す。それは、東ドイツ担当だったスパイの元締めである主人公を、イギリスを裏切ったスパイとして東ドイツに雇わせ内部から崩壊させるというもの。
手始めに、主人公を実働班から内部の事務職へ移させ、そこで横領を働いたということでクビにして退職金も出ないままおっぽり出させる。新しい職を探すがどれも長続きせず貧乏長屋ぐらしをする主人公。そしてそんな貧乏暮しをしていたところに東ドイツ側のスパイが接触してくる。という展開。主人公は新任のスパイマスターの対抗馬をそそのかして失脚させるのが目的。