「安楽探偵」その1

小林泰三なのに殊能っぽい。と言えなくもない

安楽探偵 (光文社文庫)

安楽探偵 (光文社文庫)


小林泰三と言えば超限探偵Σに代表される飛んでも系の安直落ちか、密室・殺人からの派生の複雑怪奇な推理を行うパターンの両極端な感じの推理小説しかない感じだったのが、
今回ようやく両者をうまいこと組み合わせた短編集が出た感じ。
いわゆる「密室・殺人」の四里川とその助手風な探偵と助手のコンビの出てくる話。多分四里川ではないな。一応実体はあるみたいだし。もしかしたら生前の話なのかもしれないけど。

アイドルストーカー

簡単にいうとperfect blue
探偵事務所に自分をアイドルの富士唯香だと名乗る依頼人が訪れた。
ストーカーからの手紙に悩まされているという依頼人。最初は自分の格好を真似たストーカーの写真が送られてくるだけだったが、段々とその送られてくるまでの間隔が狭まり、遂には雑誌に載せたりしていない自分の部屋着と同じ格好の写真まで送られてくるようになった。そしてついにコンビニに出かけて戻ってきたときに同じ格好のストーカーと対面する羽目になったそうな。一連の話を終えた依頼人は風呂場のマジックミラーに写っていたという男の写真を見せると言って、手鏡を取り出した。「ほら、ここに写っているこの男ですよ」

依頼人自身がそのストーカーという小林泰三によくあるパターン……
と思ったら……
わざわざ依頼人の性別ぼかした書き方したり、助手が依頼人を不自然に思う描写入れたりと、この手のパターン知ってる人こそ騙される系のヤツですかね。
最初「またこのパターン?」と小林泰三によくあるタイプのアレかと思っていたので見事にやられた。でも最後の書き下ろし読んだら流石にそれも嘘かなと思えてくる。
うん。落ち的にも叙述トリック的にもperfect blueだな。

消去法

他人を消し去ることができる能力を持っているという依頼人。最近同じ能力を持った人間が現れたという。

これはどう思わせたがってたのか謎っぽい。 「予め決定された明日」的な妄想落ち?
実際やるとしたらかなり大がかりだなこれ……