「隻眼の少女」

隻眼の少女

隻眼の少女

第一部途中。


うーん。
今度も珍妙な格好の探偵ですね。メルカトル鮎に続くシリーズにするつもりなのか。
それにしても片方が義眼って、一体、元の目はどうしたんだ?潰したのか?わざわざ名探偵を継ぐために片目潰すとかちょっと考えられないですね。もしかして人相変えるためにやったんじゃないか?江戸川乱歩の短編でそんなのがあった気がする。
そして、どうにも伝承とみかげの立場が同じですよねー?
まあ、母親と名前が同じという点が違うみたいだけど。あー、そもそもスガル=みかげの母親と捉えれば、みかげも母親と同等の力を持っているとも考えられますよね。
しかし、父親の体の丈夫さを継いでいるあたり、やはりスガル=みかげという構図なのか。


登場人物は、「翼ある闇」と同じような構図なのが目立ちますね。双子。
とすると、犯人は香菜子ですかね?
一応家系図には出てるし。そんで、市原という仮の姿で屋敷の中にいると。
まあ、登場人物だけじゃなくて探偵の珍奇さとか古い屋敷のとか。そういえば、最初の事件が首切り死体ってのも同じか。


伝承のとおりに捉えると、龍の淵で首切り死体が発見されるって状況は見事に暗示的ですよね。
まさに、スガルが龍を退治したのと同じような。
ということは、龍=現在の琴折家で、いつの間にか龍に支配されていた家系をもとに戻す為に竜退治をするという意味が込められているのか。
あるいは、龍というのがいわゆる自然現象的なものでなく、琴折家と対立した何かしらの一族だったのか。そしてその復讐のために自分たちがやられたことの意趣返しとして行っているのか。そうすると、「兇業の娘」ってのもなんとなく筋が通る。


そんで、その本家にしろ龍の一族にしろ、それに当てはまるのは、やっぱりみかげですよね。いかにもな因習と構図が似てるし。
つまり、みかげ側が本家であり、現在の琴折は偽物であると。


みかげの言っている、「春菜は脅迫状を貰っていた」なんてのも、結局みかげが言っているだけだしね。本当かどうか分からない。
それに春菜の行動も気になる点があるし。
毎日、西の塔のテラスから竜の首を見ていて、そこには種田静馬が座っていた。
殺される数週間の間、どこか心ここにあらずという状況で、殺される当日はどこかうきうきしていた。
そして、占い師、もしくは探偵と噂される人に頼みごとをしている。2回ほど。
種田静馬という名前の書いてある封筒が机においてあった。書いたと思われるマジックは部屋になかった。


えー、ここから考えられるシナリオは。
春菜は竜の淵を毎日望遠鏡で見ていた、そしてそこに現れた種田静馬に一目惚れしてしまった。あるいは、最初は不届きな奴だと思っていたが日が経つに連れ惹かれて言った。
それが、殺される数週間の間の放心状態の理由。
そして、毎日竜の首に座りに来る種田静馬に会う、または名前を知りたいと思った。
そこで例の占い師に相談である。
占い師は名前を調べるように依頼される。そして次来たときに名前と、例の名前を書いた封筒を渡し、
これはおまじないだ。恋愛を成就させるための。
と言う。
春菜は封筒を持ち帰り机の上に置きっぱなしにした。
そしておそらくその際にも、犯人の血行日時が予め示されていたのだろう。当日、春菜は自分で屋敷を抜け出し、犯人と会った。おそらく種田静馬に合わせるかあるいはお呪いを成就させるための儀式が必要だと言って犯人が呼び出した。
そして殺害。
竜の首に死体を置いた。予め、自分の行う推理に合わせて状況証拠を作っておいて。



そんでまぁ、何だ。
静馬がみかげの父親、山科と語り合うような場面がありますよね。やたらほのぼのとした。
凄い怪しいですよねこれ。常識的に考えて麻耶雄嵩の小説ではありえないシーン。つまり何かしらの伏線と見てよろしい。
いかにも、種田をみかげの婿にするよと言わんばかりの描写。本当にそうなるかもしれないが。油断させてるのかな?


今んところ怪しいのは
戦後に資料を琴の湯と二分した。しかしこれは何かしら重要そうな雰囲気醸し出してるからアウトかな。いや、多分、戦災で資料が琴の湯と二分されたことではなく、戦災で起こった何かしらの出来事が重要なんではないかと思われてたが、
それも後で、爆撃を受けて(理由は誤爆と思われる)、村が壊滅状態に。そして分家が政界と太いパイプを持っていたために復興が早く進んだという話が出てきたので。あんまり重要そうではない感じが。
なんかまあ、さも重要そうに出てくる神棚の下の焦げ目とか凄い意味なさそうだよね。
こじつけ推理のために持ってきてるんだろうけど。


まあ、みかげが犯人だとしても、そのまんま自分を犯人とする訳ないし、誰かしら状況的に一番合いそうな人物を見繕って仕立て上げるんでしょうね。
うーん、メルカトル鮎短編の読み過ぎかな?あれ本当に「推理するだけ無駄」の典型的な推理小説ですからね。