北原尚彦「霧幻帝都」

突如としてロンドンの霧の中に現れた「緋色の霧」。その霧の現れるロンドンの至る所で怪異が起きる。人が消える、人が凍る、異形と化した動物が人を襲う。
その霧の原因を突きとめようとする在英日本公使館在駐のマキノと美術学校での友人ジェニングス。
霧の拡散の仕方と風向きからその発生源となっている教会へ向かうが、そこで出会ったのは……


EXノベルズってのはエニックスから出てた小説のレーベルですね。
エニックスの小説っていったら大抵コミック原作の小説とかゲーム原作の小説なんで、これもその類のモンかと思ってたら違うらしい。
オリジナルなのは知ってたが、なんせこの「EXノベルズ」って装丁が凄いラノベっぽいのね。というか、EXノベルズって名称自体がスゲーラノベ臭い。
徳間デュアル文庫辺りを彷彿とさせるような。


北原尚彦といえば、例のスターオーシャンラノベ化も手掛けているの*1で、やっぱりこれも、ロンドンを舞台にしているがラノベっぽい話なのかと思ってたら、さにあらず。
思いっ切りホラー。


まず最初の緋い霧の犠牲者はホレス・ケイザー。緋色の霧で視界が悪くなってるところに対抗馬車がやって来て衝突、馬車から転落。揚げ句その馬車の車輪に頭かち割られます。
物乞いのジャックは冬でもないロンドンのど真ん中で凍死
娼婦のジェインは野犬に食われて死亡
「鼠いじめ」の元締めのジョン・スミスは自分の飼い犬に食い殺されて白骨化
ウェイド家の馬丁アンダーソンは馬に食われて死亡
ウェイド夫人の小間使いメアリーも同様に死亡
ビル少年は母親に連れられていったハイドパークの林で木に絡め取られて死亡
母親も首を千切られて死亡
エリザベスはハイドパークのサーペンタイン池の魚に食われて死亡
その時一緒にいたアーノルドは先程の林に入りこんで恐らく死亡


という風にどんどん死んでいきますねw*2
無駄にどんどん死んでいくんだよねwなんか異変の解決よりもこの怪異を書く方に重点おいてる感じですね。
まあ、ラノベ層ってむしろこういうの嫌いそうな印象があるんだけど良いのか?と思ってしまったが、あとで調べてみたらEXノベルズってのはファンタジー・ホラーのレーベルだったらしい。モロにホラーだったのも当たり前といえば当たり前なのか。


色々とロンドンの地名が出てくるのは良いんだけど、あいにくとこちらはそんなにロンドンの地理に詳しくないからイマイチどこがどこだか。
写真と地図でも見ながらだったらまあ楽しめたのかも知れないが。
でも地図ぐらい載せといてもよかったんじゃないかなぁ。

*1:出版社は当然エニックス

*2:他にもまあ、消えてる人間が居るんだけど
娼婦のアガサは同業のベアトリスと一緒にいるところで霧の中に消えた。
次はそのベアトリスの姉ジュディ・アリソンが産んだ赤ん坊。窓の隙間から入りこんだ紅い霧に消えた。
その次はジュディ・アリソンの夫が追い掛けていた掏摸が霧の中に消えた。