屍鬼の由来

前々から不思議に思っていたのだが、一体何故小野不由美は「屍鬼」なんてひねりのない言葉を使ったんだろうと。
だって、「屍」の「鬼」なんて余りにもまんま過ぎて厨二病患者ですら使わないような工夫のない言葉じゃないのかと。
一応、「屍鬼二十五話」の「屍鬼」からヒントを得て屍鬼にしたんじゃないかとも思えるが、余りにも吸血鬼としての繋がりが薄い。


1994年出版の「吸血鬼の事典」には以下のような註釈がある。

本文中で「吸血鬼」を示すのに用いられている単語は、主に vampire, undead, revenant, immortal の四種である。これはそれぞれ「吸血鬼」「屍鬼」「亡者」「不死者」と訳したが、文脈によっては undead を「不死者」とした個所もある。

マシュー・バンソン/著,松田和也/訳『吸血鬼の事典』P12

恐らく小野不由美はこれを見て"Undead"の日本語訳として「屍鬼」を使うのはごく普通のことだと思ったのだろう。
なんの説明もなく唐突に「屍鬼」という言葉が出てきたのも説明が付く。
一般に流通している言葉として認識していたのなら、特に説明はいらないと思うのは当然だ。
屍鬼』表紙のデザイナーがローマ字で「shiki」なんて入れたモンだから余計におかしな事になってると思うのだが。本来なら何かしらの対応する英語を入れるべきところを『屍鬼』は作者の意向なのか、単なる造語と思ったからなのかUndeadは使わずにShikiを使っている。
ちょっとばかしセンス無さ過ぎないか?
ところで、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」のタイトルは本来"The Un-Dead"だったのが出版直前に"Dracula"となったという逸話があるらしい。これを知っていたとしたら、吸血鬼物のタイトルにUndeadを使うのは確かに理に適ってるし、その訳語である「屍鬼」を使うのは、なるほど『屍鬼』の特色を考えれば十分に納得がいく。


ちなみに上見て、単に訳者が『屍鬼』読んで「屍鬼」って使っただけじゃないの?と思うのは大まちがいだ。なんせ、『屍鬼』出版は1998年、『吸血鬼の事典』出版は1994年だからだ。