P.K.ディック「ザップ・ガン」

前半確かにだらだらとはいかないが退屈な展開だったが、後半は目まぐるしく状況が変化する。


謎のエイリアン衛星が出現し、東西諸国は蜂の巣をひっくり返したような騒ぎに陥る。
全く敵の正体は不明。目的も不明。ただ衛星は刻々と打ち上げられている。
敵の行動は衛星を打ちあげるだけだが、それが何らかの珍妙な形をしているわけでもなく、見た目は地球上のものとかわりないらしい。
そして、敵は直接姿を表すわけではなく、具体的なビジュアルは謎に包まれたまま。
そんな情報の少ない中、敵の情報を得ようと東西の国々がひたすら右往左往する様はなんともリアリティがある。
しかし、ディック小説なのに東西の国家が手を結ぶとかいう理想主義的な展開があるのにはちょっとびっくり。しかし、実際には東西間で戦争など起きてもないし、兵器開発にしてもお互いに威嚇行動をとっているように見せかけているだけらしい。


大抵のディック小説は、話が意外な(変な)方向に展開するのだが、今回のはそう言うことがないので物語自体がまとまっている(あんまり破綻してない)印象を受ける。
というか、変な展開になりそうなのを無理矢理修正してる。途中いろいろ立ててあるフラグを、へし折っちゃってるんだよね。

  • 老兵士から読み取った情報が、クローンの組織図。もしかしたら未来から来たんじゃなくて現代で作られたクローンなのでは
    • →そんなことはない
  • 嫉妬に駆られた主人公の愛人が銃をぶっぱなす。その後主人公何故かその場所から数キロ離れた場所で目を覚ます。新しい能力の発現?あるいはタイムスリップ?
    • →単に呆然自若でうろついてただけ
  • コンコモディに冴えない一市民が選ばれる。大活躍フラグ?
    • →最後までぱっとしなかった
  • 戒厳令で施設に入れなくなったコンコモディのひとりが他のメンバーを集めて訴えようとする。何かやらかしそう。
    • →エイリアンが居なくなったら普通にコンコモディになりました
  • もしかしたら、元恋人を復活させられるかもしれない
    • →現恋人とセックスして忘れました


回収されたのは、
東の能力者が美人の女→主人公と仲良くなる。
ぐらいか。