時雨沢恵一「SAOA GGO」3巻

これはゲームであって、遊びである

時雨沢恵一のSAOスピンオフシリーズ3巻目。
どうも流れというか落ちというところからすると、3巻まででようやく一つの話が終わったんだなという感じ。1巻が微妙臭いのは3巻までを想定してたからなんですかね。
しかしオチが…普通。普通すぎる…。そ、それは流石にみんな予想ついてるだろうし…。まあ、冷静に考えると割とドン引きする正体でしたね……。
アニメの方ではどういうわけか1巻を6話2,3巻分を6話とかいうなんか偉いバランス悪い配分にしてますがどういうことなんですかね。
最初にアニメ用のストーリー作っておいて、あとから小説として出したんですかね。よくある福井晴敏ローレライみたいな。
時雨沢恵一にしてはなんか微妙な感じがするのも、アニメありきのストーリーだったからですかね……。おそらくオリジナルは脚本家あたりが書いてたんですかね…。SAO2で何故か銃考証に時雨沢恵一の名前があったのもこの頃からすでにプロジェクトが始まってたことを示す証拠ですよね…。露骨に。あそこで名前出たあとスピンオフの小説書くってもう既定路線過ぎてな…。
あ、もう出た時点でアニメにするの決まってるんやなって。ていうか、その割に制作会社がSAO2と同じでないのが微妙っちゃ微妙ではある。

それにしてもシャーリーが本当に仲間助けるために背負ってたってのは意外でしたね。出てくる連中連中がどれも死体を盾にすることしか考えてないから、ピフトーイと同じこと考えてたが。てっきり、SAO本編の緑髪と同じキャラか、作者がそのキャラ気に入ったのでそっくりさん出してきたのかと思いきや、リアルで狩猟免許持ってるレンジャー。
こいつの闇落ちシーンは最高でしたね。動物を撃つというのはまあ仕事上のこととしても人間を撃つのには忌避感を持っていたのが、仲間の仇討からピフトーイへ憎悪を募らせて、「これはゲームであって、遊びなんだ」と。あ、これは2巻あたりの話か?
1巻2巻はオンラインでサバゲーやってるだけ感ありましたけど、今回になってからはもういろいろファンタジーな武器出まくってて「それありなん?」みたいな気にさせられますね。

感想としては分厚い割に早く読めたな。という以外に特に。やはり趣味全開の話ってなるとわかりにくい点がポロポロ出てきますね。SINCの連中のリアルとの見た目の対応とか、アニメのほうでようやく関連付けできた感じだし。銃に詳しくないのでどういう風な取り回ししてるのかさっぱりわからなかったり。やはりこれはアニメ前提で作ってる感がすごいな。
それにしても、レンが覚醒すると銃が喋り始めるって普通に考えてかなりサイコなんですが。蓮実聖司かお前は。あ、レンって名前もしかしてこれからとってるのか?

「世界推理短編傑作集1」その1

翻訳見直した割に微妙な時代の訳

世界短編傑作集の新盤。まあ、ものが良い割に、いつまでも戦前センスのまんまだったからなぁ……むしろ遅いのでは?
「『世界短編傑作集』って名前の割に、推理小説しか入ってないやん!どうなってんのこれ?」って突っ込みが多かったのか、名前に「推理」の二文字が入るようになりました。
遅い……今更か……。

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)

世界短編傑作集 1 (創元推理文庫 100-1)


まあ、名前分かりやすくなって、戦前の悪しき習慣「他の文庫に納められてるからこのアンソロジーには収録しないよ」がなくなったことはよいことだ。

と思ってたら、解説読んだ限りだと「犯罪文学傑作選」に収録されてるからって理由で、パール・S・パックの「身代金」は今回も未収録だそうな。画竜点睛を欠くというのはまさにこういうことでは?
何なんですかねこの習慣、ほかの本買わせるための手段?今だとすぐ本絶版になるからやる意味無いんでは。
今回復元されたのは、ポー、ドイル、チェスタトンの作品らしい。本書にあるのは「盗まれた手紙」、「赤毛連盟」の二つ。
でシリーズ全部で47短編となる。えらい半端だな。後一つ復元して48短編にした方がきりがよいのでは?47って四十七士じゃあるまいし。
しかしわざわざ旧文庫でも今文庫でも除外してあるのはなんか理由あるのか?他短編集に収録されてるからってねぇ……?

他としては、英語から重訳だったのを原語からの直接訳にしたそうな。まあこれは良いところですね。
翻訳も見直したそうな。まあ、旧文庫にあった変な文字ぬけやら句読点のおかしな点は無くなったかな。
ただ文章の見直した点は最低限で、例えばセリフの中で日本語の常識としておかしな点とかはそのまんまらしい


ポオ「盗まれた手紙」

流石にコレは新訳出せよ……

おなじみ。コレ読んだことない奴はモグリだろっていっても過言ではない基本。
ただなんかこの翻訳どっから持ってきたんだろ。
自分の嫌いな
「セリフが変にマンガ臭い」
ってタイプの翻訳。マンガ臭いってのはセリフが丁寧語とタメ口ってのがあんまり統一されてないとか、普通の口調になのにいきなり「~だぜ」みたいな乱暴になったり、「~かしら」みたいな今使ったらオカマ扱いされそうな言葉使うとか。
そういう、ドラえもんの昔の作品みたいな感じっすね。
まあ当時はこういう変竹林なしゃべりが普通だったんですかね。にしてもこれはさすがにレベル低いタイプの翻訳だから新訳出して良かったんでは?
昔の翻訳にも善し悪しあるからなぁ。
そんなわけで、翻訳の質が気になって読み進められない。
まあ内容知ってるからとばしても良いかな……

追記

読んだけど、思考の盲点ってのを説明すんのにページ数費やしすぎてなんかすごく眠くなった。
昔、偕成社版読んだときは普通に読めたからやっぱり翻訳の質かな。



「女学生奇譚」その1

色んな意味で臭い

女學生奇譚 (文芸書)

女學生奇譚 (文芸書)

半分くらい読んで、登場人物がビビりすぎなのが鼻に付くようになってきた。
うんまぁ、「読んだら死ぬor気が狂う」とか言う眉唾な曰くがそもそも良くある上に、「ドグラ・マグラ」という実例(読んだら気が狂うと言われてるという意味で)あんのに、こんな本見た事ないとかいう奴はどう考えても見識が狭すぎる……。
自分なら見た瞬間「それドグラ・マグラのパクリですよね?」って言ってしまう自信がある。
そんで、見たことないとか言ってる奴が80過ぎてそうな爺で、口裂け女の伝説を作って広めたとか言ってる人。
えっ、それじゃ今回のコレもお前の仕業ちゃうんか?みたいな疑問湧いてきますよね。
とくにその本の調査の依頼が持ち込まれたのがそのジジイと昔縁のあった奴の出版社っていうんなら尚更。
とか思ってたら、やっぱり古い紙使って見た目だけ古そうに見える本だったという鑑定が出る。まあ、紀田順一郎の本とか「私家版」とか「ナインスゲート」読んでたら思いつくパターンだわな。それはそれで良いとして、偽書ってわかった後の登場人物の反応がおかしいよね。
「作者不詳」みたいなガチ怪奇の起こる本なら兎も角、挟んであったメモの脅し文句程度で後は何も起こってないんだからビビる方がおかしいわな。でもって偽書と分かってなぜビビる……
今考えると、白髪爺が黒幕だとすると、あやめの存在が怪しく思えてきますわな。兄貴が住んでいたというアパートもなんか特徴の見えない部屋とか言ってたし、まずは偽装されたってことを疑うべきだったのでは?アメリカ住んでたという割に、日本語達者だし。本を直接出版社に持ち込ませずに、依頼されたライターにだけ見せるって手口からすると、過去の因縁が原因なのかなぁ。伝説の奇書みたいな感じでオカルト雑誌に取り上げさせて、良い気になってるところでネタバラシして信用失わせるとか……

なんとなくタイトルに惹かれて読んで見たけどタイトル買いした程度の本という感じ。
うーん吉村某よりはマシな程度かな

「ダブル・ジョーカー」

大人向けなろう小説

ダブル・ジョーカー (角川文庫)

ダブル・ジョーカー (角川文庫)

ダブル・ジョーカー

なろう系俺TUEEEE小説によくあるパターンだが、分かりやすい凡人イキリライバルを登場させて、それを主人公側がこてんぱんにのすという分かりやすい構図のもの。
前作まで読んでいれば、これでD機関出し抜ける訳がないと思いつつも、「ジョーカー・ゲーム」の「D機関SUGEEE」感溢れる内容に飽き飽きしていた自分は、なんとか風機関がD機関に一泡吹かせてくれないものだろうかと思っていたのだが
結果はご覧の通り。噛ませ犬にすらなっていない。ライバルポジションにすらならない路傍の石だったという酷いオチ。
もうこの時点で読むの一旦辞めた。
やり方的にはD機関とそうそう変わらずにそれでいて「死ぬな殺すな」とかいう少年漫画かラノベじみた方針だけでそんなに何かが変わるのかと納得がいかなかったってのもありますね。
読者層的にこの子どもじみた方針はやはり必須だったんですかね…。

ブラックバード

真珠湾攻撃時に活躍していたスパイのドキュメンタリー番組を見ていたのでその延長で。
その番組見てたおかげで、この最後のアメリカのやり方にも十分納得行った。
やっぱりなんかこれ、前知識としていろいろ持ってないと単なる俺TUEEE小説にしかならんのじゃないのかな。
基本的になんかかんやあって「日本のスパイはすげぇや」って落ちのワンパターンな話だしね。
時代背景についてろくに説明していないから、余計にそう感じてしまう。

話としては割と良かったです。
アニメで出てないよねそういえばこのエピソード

仏印作戦

なんとなく「TRY」の逆パターンなのかなと思った。
過去の類似作品DISりながら俺TUEEEしてるんなら、類似作品も見といたほうがいいのかなと思わせられた作品。ていうか、「TRY」ってジャンルなんだろう。
なんとなく「D機関」の名前を出せって言ってた時点でかなり胡散臭いなと思ってましたけど案の定でしたね。それはいいとして、外部にこの名前漏れてるなら同様のことを敵対組織がやりそうだなぁと思ってしまった。ていうか外にもこの名前で漏れてるのか?なんかそれとは別な符牒じみた名前で呼ばれてそうだけど、チヨダとかサクラとか。D機関って名前がなんか重要なのだろうか?ていうかDの元ネタは何なんだろう。団子坂のDか?

アニメのドイツ軍人がやたらゴツかったということで印象に残っている。何だありゃガンダム作品に登場しても違和感なさそうだが。ドイツ軍人といえば細長の冷徹な男というイメージだからそう感じるのか?アクションないエピソードに必要のない無駄なゴツさだったな……。まあアニメに関して言えば無駄にキャラデザゴツい連中ばっかだったからな…。
内容はまあアニメはほぼそのまんまにしてあったようです。違いは遺体収容の病院でヴォルフ大佐と結城が知らずに会合していたことぐらいか。こちらでは特にそんなシーンはない。

蝿の王

スパイを探せ!的な内容。コミュニストと化した主人公がD機関からやってくるスパイを見つけようとする話。
確かに容疑だけで言ったら最初の二等兵が普通に怪しいけど、そこは意表をついてお笑い芸人が実はという可能性がありそうだったけどまぁ‥‥‥(ネタバレのため伏す)

眠る男

ジョーカー・ゲーム」のロビンソンで登場した「スリーパー」のエピソード。

さ、催眠術……
いつの間にこれは江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズになっていたのだろう……元からか。”D”だし。

「ウェイプスウィード」

ラノベ作家にSF書かせてみた系の中じゃ割とイケてる部類

読んでるときの印象としては、「SFマガジン」よりも「異形コレクション」寄りという感じ?
ラノベ特有のイキリ主人公でもないし思想もイキってない、割とまともな部類の小説ですねまぁ。
あと嘘くさい恋愛劇入れないあたりもまだマシな方。

帯見て「エンタメ作家…あっ…(察し)」となったけど、まさか本文中にも挿絵があるとは思わなかったな…。ハヤカワ文庫で挿絵ありって久しぶりに見た気がしますね…。

「塔の中の部屋」その2

随分時間がたちましたが

塔の中の部屋 (ナイトランド叢書)

塔の中の部屋 (ナイトランド叢書)

霊柩馬車

ヒューが語り始めたのは、田舎の屋敷で起こった怪奇ではなく、ロンドンのアパートメントから目撃した霊柩馬車についてだった。
友人のアパートメントに泊まって、寝苦しさに起きたところ、窓の外に霊柩馬車が止まり、ヒューに乗れるのはあと一人だけだと囁いた。時計を見ると、11時を指していた。

ほぅ…なるほどね。
いいか悪いかよりもなんか、もうちょいうまく落ちの付けようがあるような気がしてしまう。なんとなくこの落ちはどこかで聞いたような気がしますね。
「黄衣の王」みたいな感じ漂わせておいて、これかい!でも、この本ではまだマシな方よこれ。

女に振られて茫然自失となって鬱状態になっていた男が、ある日芸術的才能を開花させる

は?ちょっと落ちが……意味不明ですね……
結局、いつ破滅が訪れるかというプロセスを楽しむものなのだろうか……。猫のような目をした女に振られたのと、最後猫らしき動物に引き裂かれて殺されたのに何か因果関係が……?
女の目が描けないから、庭に現れた灰色猫の目を描いたあたりとか、その絵を描いてしまってからまた鬱状態になるあたりまでは分かるんだが、最後アトリエで未完成の女の絵を前にして、その絵ごと引き裂かれてズタズタになっていたのは展開唐突過ぎて「は?」しか感想出てこないですね。

芋虫

かつて語り部の泊まったことのある館では、誰も使用していない寝室があった。ある晩、その部屋を通りかかった主人公が目撃したのは灰色の光を放つ大量の芋虫が、ベッドを覆っている光景だった。

癌が感染するとか言う、石器時代並みの教養に基づいたホラー?
とも考えてしまうが……。癌の化身の芋虫に取り付かれて、癌発症。迷信にあふれていた時代でもあるまいし……癌となるとホラーよりも医療の分野という感じであんまホラーの薄汚さとは合わない気もするが。最後の末期癌患者のいた部屋を消毒とか言うあたりも、医療の未発達だった時代の名残という感じで、話自体がバカバカしい感じになってしまう。
幽霊などの実体を伴わないホラーが多い中で、芋虫みたいな気持ち悪い代物が出てくるのと、その落ちはまあ、意外性あっておもしろいけど………
現代日本でやったら癌患者にたいする差別を云々言われ……すらせずに鼻で笑われるレベルかな
落ち:結局その館の主はガンで死ぬ。主人公はもしやと思い奥さんに尋ねてみると、発症はあの館に滞在していた頃で、例の寝室はがん患者が使っていたものだった。

チャールズ・リンクワークスの懺悔

母親を殺した貧乏文房具屋が処刑された。処刑に立ち会ったティーズデイル医師はしかし死んだその男の気配がまだそこにあるような気がしていた。そして、ある日、処刑された刑務所から無言電話がかかってくる……


ありがちにありがちを重ねてパイ生地にしたような感じ。
何か実は犯人別にいたとかならまあよかったんだけど。
無言電話掛かってきたので、交換局につないでかけてきた箇所調べて貰ったらなんと刑務所でした、で終わらない点はまだましな方かな。「そこは墓場です」よりはまぁね………
落ち:結局成仏できてなかったので神父を読んで有り難い文句を唱えさせる。すると幽霊は成仏した

土煙

スピード狂のドライバーが子供ひき殺して、自分の家の門柱に激突して死んだ。その事件以降、その付近では、いないはずの自動車の警笛や誰とも遊ばない女の子の幽霊が目撃されるようになった。「私」はその話を聞いてなぜその男は子供をひき殺した後止まらなかったのかと考え、とある結論に達する。

新青年傑作選あたりに載ってたのとはまた別の話。
自動車の幽霊が出てくるというあたりが確かに「現代的」ちなみにこれ百年前の小説短編集ですが、現代日本においても相変わらず同じモチーフ使っているあたり成長ないんかこの猿ゥ言いたくなるけど、まあ、単にみんな思い付くモチーフってだけでしょうな。

「触発」その1

これシリーズだったの?

新装版が出てたので手に取ったら読み過ぎた。
久しぶりに読んだけどホント面白いなこれは……登場人物何人も登場させて同時に動かしながらも混乱させないってのがなんかスゴい。(歳食いすぎだろ流石に)
最近、日本でもダイハード的アメリカ式アクションドラマ出てたりするけど、そんな中にあってもあんまり色褪せない魅力がありますよねこれは。
運悪く予告の電話をとってしまった刑事
犯人
陸自隊員
の三人の視点を軸に話は進みます。
あとなんか出世コースから外れなかった後藤さんみたいなのが出てくる。

三人視点となるとなんかこんがらがりそうなイメージあるけど特にそういうのはないですね。
今読むと、爆弾犯捜査に陸自の爆弾解体のエキスパートを出向させるって辺りになんかスゴいものを感じますね。なんかモチーフあるのかな。

このシリーズの次の作品が「アキハバラ」らしい。碓氷とか登場してたっけ?レベルの影の薄さなんだけど本当にこれシリーズなの?