萩原朔太郎「猫町」その1

「さては刀剣女子だなオメー」

猫町 (立東舎 乙女の本棚)

猫町 (立東舎 乙女の本棚)

夢野久作の瓶詰地獄で知った同シリーズ。全く知らない作者の本読んでみたらどう感じるのか?という点気になったので、取り敢えず入りやすそうなものを。
今回の絵師も刀剣乱舞イラストレーター。そろそろ、刀剣乱舞関連だから買ってるのではと言われかねない気がしないでもないけどそんなことは生憎とない。

イラスト

絵の特徴からすると、今剣あたりが担当なのかな。押絵と旅する男と違って今回は抽象的な絵が多い気がしますね。内容が内容なだけに。
この調子なら稲垣足穂あたりでも行けそうな気がしますね。
そして女の子キャラ絵も多めなので、安心

内容

方向音痴の作者が東西南北の方位の認識違いを利用して普段歩いてる街を違った「方向」から眺めて無意識の錯誤を利用した旅をしようと考える。
猫町と言う割に猫出てくるのほんの少しだな。

内容は良いですね。イラストと文があってるという感想もよくわかる

他のも読んでみようかとも思いましたが、ほかはあんま絵の方向性が合わない気がするので……読むとしたら江戸川乱歩ぐらいですかな。

あと電子書籍だとなんか、微妙ですね
文字サイズが調整できなくて自分の持ってるタブレットだと本より文字サイズ小さくなってしまう。色味も印刷した本の方が良さげ

ピーター・トライアス「メカ・サムライ・エンパイア」その1

メカ・サムライ・エンパイア 上 (ハヤカワ文庫SF)

メカ・サムライ・エンパイア 上 (ハヤカワ文庫SF)

なんとなく新書版のほうが表紙良さげなので新書版買いました。
文庫版だと分冊にしてもそんなにページ数無いのになぜ新書版だとこんなに分厚いのか……錬金術
新書版の版組レイアウト別に読みやすくも無いのに値段高いのはなんか騙されてる気がする。

内容はロボのパイロットたちが主役っぽいですね。主人公とその友達2人。
しかし、日独戦争が始まり、その内のドイツ系の友人とは敵同士になってしまう……らしい。ガンダムSEEDかな。
ドイツ系の奴が金髪碧眼らしいんでモロカガリなのではこれ?と思ってしまう。

松本ヒサオ「続・白髪小僧」その2

完結

やはりドグラ・マグラに収束してゆくのか……

ネタバレをするべきか否か……
しないとするなら、「キチガイ地獄」とか「ドグラ・マグラ」のとある登場人物を知っていれば、ああそういうことかと納得の行く出来でございます。
個人的にはやはり、ドグラ・マグラとは切り離したほうが良かったかなと思いますが

マなんといいますか、読んだあとで、「白髪小僧」とは結局覚めることのない「悪夢」つまり現実に耐えられなくなったミルロウ公爵が発狂してしまうという話だったんだなと気付きましたので
そういう意味では有益であったかなとも思います  

面白いSF

人間、ポジティブな情報よりネガティブな感想の方に飛びつくよねって証明

アルフレッド・ベスター「分解された男」

多分、これが一番面白いと思います。

分解された男 (創元SF文庫)

分解された男 (創元SF文庫)

SFとしての評価を受けていながらも、エンターテインメントとして面白いという異色の作品。
なかなかこのレベルで面白いものと言うものは早々ない。「虎よ虎よ!」のように変な思想もこもってなくて、単なる悪人と警察が戦い合うというエンターテインメントに徹しているあたりがすごい。

…ところで、超能力者系の話ってSFに入るんですかね……個人的にはファンタジー分野だと思うんですけど、一応SFらしい。

かつては早川から「破壊された男」というタイトルで出ていたけど絶版。だったのが最近また再販されたらしい

神林長平戦闘妖精・雪風

いいだろ別に、アニメから入っても

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)

大方のファンと同様、GONZOOVAで知ったタイプ。最もPV見て本買ったので、やっぱりあの映像作品に対する評価は「糞」でしかないけど。
本当に本当に申し訳ないが、やっぱり神林長平の最高傑作ってなるとどうしてもこれになってしまう。
変に思索的でないからかな。他の神林長平作品はやっぱり笑える内容か、奇妙な世界での冒険というテイストのものが多い中で、現実と陸続きである話は親しみやすいのか。
なかなか褒める言葉が見つからないがまあそういうこと

伊藤計劃虐殺器官

SFは変わった

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

電脳世界で構築された清浄な世界から、銃の支配する現実の世界へ
SFというジャンルはどうにも戦争なるものを避ける傾向にある。現実で戦争起こりまくっているのだから物語の中ぐらいは平和な世界を構築したいのだろうか。あるいはSFの代表的な作品を書いた人たちが、「世界政府」のようなものを夢見る人たちだったのが大きいのだろうか。
大体の人が避けてきた「戦争」に従事する人々を書いているところが革命的でもあるし、現在の日本人の興味をうまく捉えているとも言える。
80年にも渡る平和に飽きた日本人はおそらく今度は幻想としての「戦争」を求めているのだろう。戦前生まれが過剰に平和を渇望するように

フレドリック・ブラウン「さあ、気ちがいになりなさい」

初めてオモシロイと思ったSFでありますので

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

SFにはこういうジャンルもあるんだなと感心した覚えがあります。これはSFに入るのか?YESであります。もちろん
話は短い、読みやすい、そして話自体のオチの付け方が面白い。
これをSFなんてジャンルに入れておくにはもったいない。
SF以外のジャンルとして売ったらもっと売れるのでは?

星新一ショートショートもなかなか面白いが、あんまり毒が強すぎる。

ヴァーナー・ヴィンジ「マイクロチップの魔術師」

攻殻機動隊 gits」の元ネタっぽい感じのする小説
ニューロマンサー」と違って変に意味不明用語を多発するわけでもないし、日本語の文章が妙ちきりんなわけでもないのでサイバーパンクの入門にはぴったりかもしれない。

ラストは色々言われてそうだけど結構良い終わりだと思いますね。
MMORPGを元にしたラノベやゲームみたく「アバターがイケメンで現実でもイケメン」とか言う非現実的でバカバカしい設定してないですしね。


此処から先は多分趣味の部類

八杉将司「Delivery」

耽美なのは冒頭だけだぞ

Delivery (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

Delivery (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

病院のような施設で育てられた少年たちが、月に一人ひとり施設の人たちに連れられて消えていく。
という冒頭シーンに、中々に幻想的というか「そういう」ジャンルが好きな人たちには受けそうな雰囲気を漂わせているなと思わずにはおれない作品。ホノジロトヲジの挿絵似合いそう
地球が地震で崩壊して、月をテラフォーミングして更に科学を発展させている世界とか言う点考えても中々ファンタジーな感じですよ。
全身義体とかなかなかに想像しやすいギミックが入っている

なんとなく今思い返してみると、大地震での地球崩壊とか月とか、全身義体とか、脳をCPUとして使う設定とかいろいろ、冒険ファンタジー名作選とかで影響受けているのではという気がしないでもない
よく考えたら、育てた少年少女を工業利用するって「コンピュータ人間」っぽいなと思ってちょっと気分悪くなった。

海野十三「金博士シリーズ」

なんか古い時代のSFを読むと現代からは考えられない間違った知識で書いてることが多いが、海野十三はそこらへんの面白さ*1だけじゃなくて、話自体も珍妙で面白い。
でもたいてい長編になるとなんかよくわからない尻切れトンボじみた終わり方するので、やはり短編のほうが面白いんじゃないかなぁ
海野十三作品はいろいろ読んだけどやっぱりハマる原因になったこのシリーズが一番面白い。



「書架の探偵」入れたかったが、あいにくとまだ読みかけなんで。
現時点ではランキングに入る傑作ではある。

*1:エセ科学とはまた別

夢野久作「瓶詰地獄」(乙女の本棚シリーズ)

文アル刀剣女子狙い撃ち

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

これはありがたい……
これでようやく夢野久作を他人に勧められそうな感じになってきた。
 
どういうわけか、これまで出てる夢野久作の本の表紙は、変に濃いというか、古臭い通り越してもう↓こういう雰囲気じゃないとだめって感じのか、確定してる感がありますよね
瓶詰の地獄 (ビームコミックス)

瓶詰の地獄 (ビームコミックス)

こういう

あの明治初期だか、昭和初期だかの怪奇系カストリ雑誌にでも載ってそうな絵柄はどこが発祥なんでしょうかね?映画ドグラ・マグラのDVDパッケージ?

ドグラ・マグラ [DVD]

ドグラ・マグラ [DVD]

今回今風な絵柄の表紙の絵本風の本が出てくれたことは非常にありがたい・・・・・・
角川文庫版「ドグラ・マグラ」の表紙や、三一書房の表紙に比べたら、まだ自分のイメージに近いですからね・・・
 
夢野久作全集 1

夢野久作全集 1

もう見ただけで手を引っ込めたくなるような表紙をしておる・・・

夢野久作全集〈9〉 (ちくま文庫)

夢野久作全集〈9〉 (ちくま文庫)

ちくまのもかなり奇っ怪なものが多い。

まあ一番影響大きいのは角川文庫のでしょうね・・・

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)


昨今のDMMゲーマー向けの一過性のブームだとしても、こういう方面のが出てくれるのはありがたい・・・。夢野久作は内容よくても、表紙の不気味さにドン引きして買わない層が絶対いると思うんですよね


イラスト

イラストレータ刀剣乱舞のキャラ立ち絵の絵師。とはいえあれの絵師の名前あんま詳しくないので誰を担当してるのかは分からない。小烏丸あたり?
「文豪とアルケミスト」の方じゃないのか……(困惑)*1まあ……絵師のセレクト自体はかなりマッチしてるから全然OK。
関係はないですけど似たような感じの女子向け夢野久作短編集「ユメノモレスク」見てなんかガッカリしてたので、どうせ表紙だけ今風何だろとか思ってたがなかなかいい感じ。
「なんで、服破けて裸体になってしまったって書いてあるのに服着てんだよ?」みたいな突っ込みはしてはならない……(何故冒頭で2人とも学生服を着ているのか?みたいな突っ込みも)
こういう絵柄なら、「ドグラマグラ草稿」とか、「あやかしの鼓」でも行けそうな雰囲気してますよ。何故若干エロスなこの作品を選んだのか……
このイラストレータ白髪好きそうだから、この勢いに乗って白髪小僧の出たりしませんかね?分量的に無理か……長すぎる……

内容

内容に関して言うと、この話こんなに読みづらかったのか……と言いたくなるくらい漢字に対して難解なルビが振ってある。ルビに対してやたら難解な漢字を使っていると言うべきか……。ここら辺も割と絵柄とあってる感しますね。

表紙とかイラストに十字架出過ぎじゃない?と思ったけど、聖書出てるし話自体がアダムとイブの話モチーフにしてるしでバリバリメンヘラ系中二に受けそうな内容してるわ。この話をセレクトしたのはそういう理由が……

まあ、そもそも「夢野」という名字からして、自己投影型アマチュア小説愛好家にありそうなペンネームしてますもんね………。

*1:出版されたのは、文アルで夢野久作出る前らしい

松本ヒサオ「続・白髪小僧」その1

頭おかしなるで

夢野久作の名作「白髪小僧」の続編の体をとった白髪小僧の二次創作作品。
当然作者は夢野久作とは別人。
そんなに内容には期待していなかったのだが、読んでみると思ったよりもおもしろい……。
目次から「白髪小僧」の目次を入れておいて「ここまでは白髪小僧でお読みください」といった念の入りよう。

白髪小僧をリフレインしているような内容で、本「白髪小僧」がここでも出てきて、青眼先生がミルメ姫に聞かせる話の内容として出てくる。しかもその本の内容が、我々の知っている「白髪小僧」と同じ………と思わせておいて微妙にちがう。そんな読者を混乱させる入れ子構造がさらに一つ上位階層にあるはずの白髪小僧の話を取り込んでいて、あたかもウロボロスの蛇のような様相を呈している。
さらには文体まで念入りに特徴を出していて、読者を幻惑させてくれる。まるで本当に白髪小僧の続編を読んでいるような……。でも本当の作者ならばコンナ話にはならないであろう……という思いがさらに戸惑いに拍車をかける。そんな恐ろしい話でゴザイます……

「最後にして最初のアイドル」その1

ラブライブ!版「銀河帝国の弘法も筆の誤り」

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)

表紙見て、「これはSFオタクがまた騒ぎ出すな……」と思って手に取ったのだが、
さすがに早川書房からでてるだけあって、凡百のなろう系ライトノベルとは違って読みやすい。
おまけにアイドル目指してる主人公が、もう一人の登場人物の手によってグロテスクな異形の「アイドル」になってしまうあたりは、「ビアンカオーバースタディ」ぽくもある。
「表紙は流行りの萌えキャラなのに、本編ではそのキャラがグロテスクな姿に変わり果てている」という、「萌えオタ表紙釣り」の典型的な代物で、これなら最近の絵柄を嫌ってるSFオタクたちもニッコリな内容だな。
と思っていたのだが……

なんとこれ、ラブライブ!の二次創作として出したものを改稿したものらしい。つまり主人公の幼児体型ツインテール少女はにっこにっこにーのアレで、それに異常な愛情を注ぐ少女は西木野真姫らしい。(ヴェエとか特に言わないけど)
正気かおまえ。
なんとなく読んでるうちは文体含めてもろにSFらしさを全面に押し出してるせいか(でも古くささは感じない)、「銀河帝国の弘法も筆の誤り」みたいなパロディなのかと思ってたけど。まさか本家本元のファンだったとは…。
え……正気なん…?これをラブライブ!の二次創作として出してた?そんなジャンルだったっけあれ?
よく許されたな……。

内容として見れば、表紙の割に読みやすいふつうのSF。いや、文体からもう、SFっぽさが出まくりなので、ラブライブ同様、SFのパロディとして書いてるのかもしれない。神林からの評価低いのもそこら辺あるかもしれない。
なんかSF部分の解説部分が変にわかりにくくて、SF書くのになれていないように見えるから、SFのパロディっぽい印象受けるのかもしれない。

うん。ていうか、そうなると表紙は表題作の子ではないな。にこは黒髪ツインテールだしな。(どうでもいい)