「星を撃ち落とす」その1

稲垣タルホとは何の関係もない……

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

表紙とタイトルで買いたくなる本と言うのはそうそうあるものではないが例外はある。
今回の場合、文庫版で表紙が微妙になってしまったので、余計に単行本版の表紙が貴重に感じる。

1章

まあ、この本の中で一番面白い章でしょうなぁ。
二転三転する事件の構図と、葉原美雲の「炎の魔女」的な印象が強烈な所為でしょうね。以降の章では単なる登場人物の一人になってしまったので微妙。
力関係と善悪の構図の切り替えも一番鮮烈なので、以降の話がどうしても地味に感じてしまう。
と言うか一番面白いのこれで以降だんだん尻すぼみになっていくので、読むのはこれだけで良い気がする。この話の順番考えたの誰でしょうね。一番面白いのを一番最初に持ってくるとはうまい手を考える。

表紙について

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

「星を見ると良いわよ(中略)望むなら仲間に入れてあげてもいいけど」の帯がなんとも印象的で、作者の名前も聞いたこともないのに手に取ってしまった。
文庫版で一転して地味な表紙になってしまったのは、表紙が良すぎたせいじゃないですかね…。表紙で無駄に読者の期待値を上げてしまったせいで、中身が不当に評価が低くなっていると。そう思われたのかもしれない。あまりにタイトルにマッチしてる表紙だからね。
まあ、自分が買った理由は右の子が大井っちに似てるからってのが大半ですがね。ちなみに表紙の二人が誰なのかはよく分からない。作中の描写からすると左が美雲で右が鮎子ですかね…。
有騎は文庫版の表紙の子ですかね…


星を撃ち落とす (創元推理文庫)

星を撃ち落とす (創元推理文庫)

「醗酵人間」その1

こんなタイトル見つけたら買うしかないやん…

醗酵人間 (ミステリ珍本全集03)

醗酵人間 (ミステリ珍本全集03)

結局のところ、魔九郎ってのは本当に魔九郎と呼ばれてる人物で一度墓に入った人なのか、それとも、壁に塗り込められた先代の蘇った姿なのか…

「深夜の市長」その1

これまた妙なタイトルを表題作にしたなと思ったもんだが、意外に過去にこのタイトルで出たのは幾つかあるらしい。

ほむらそうろくの事件簿2に続いて今度は「火葬国風景」系の短編集。
意外に海野十三シリーズが続いているのにビックリだよ。もしや創元推理文庫海野十三全集でも作るつもりなのか……?

「春待ちの姫君たち」その1

ひょっとするとこの春来というのは、あなたの想像上の産物なのではないでしょうか?

数ページ読んで、あ、これ確実にイマジナリーフレンドの類だな……と思ってたのに、次の章では普通に他の人物から認識されていました。
でもまあ、登場人物3人中2人が空想上の友だったって例もあるので、まだ希望はあるはず。
でないとあんまりこの読んでるだけで気が滅入りそうな内容にスッパリとした解決法は見つからない気がするんだが。
テンプレートかも知れないが、驚愕のラストと言ったらこれを超えるものはないもんねぇ。

どうにも「星を撃ち落とす」と同じ作者の作品ということで買っては見たものの読み終えられるのか不安。内容は確かにこちらの予想を裏切ってくれるが。空想の存在かと思ったら実在してたとか、劇がラストに来るかと思ったら次の章では普通にやってるとか。
まあ、なんか文章がまずい。わざとやってるのかどうも場面場面で何かミスリードでもさせようとしてるのか妙な間隙がある。登場人物の動きが分かりにくかったり。登場人物が実在していないことを印象付けようとしているようにも見えるが。
どうも何か「夢見る宝石」じみてて好きじゃないなこの文章は。

そういや、「星を撃ち落とす」は文庫本では何か残念な表紙になっちゃったね。あのソフトカバーの絵に惹かれて読んだところもあるのである意味残念なことではあるな

星を撃ち落とす (創元推理文庫)

星を撃ち落とす (創元推理文庫)

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

星を撃ち落とす (ミステリ・フロンティア)

ジョン・ル・カレ「寒い国から帰ってきたスパイ」その2

読了

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)

やっぱりそうなるか…というシーンで終わりましたね…まあ、そうなるな。

リーマスの作戦通り、東ドイツのスパイ・フィードラーは、リーマスからの聞き取りによりムントに対する疑惑を固めていく。
いよいよムントに対する起訴状を出せるという直前、リーマスとフィードラーは、ムントの部下たちに拘束される。尋問中、彼らの作戦はムントに筒抜けだった事を知るリーマス
このまま尋問にが続くと思われたが、突然尋問部屋にやってきた兵によって尋問は中断され、ムントは拘束される。実は逮捕された当日、フィードラーは委員会へムントの逮捕を請求していた。そして数日たった今やっと評議会が動いたのだった。
危ういところで危機を脱したリーマスだが、ムントの容疑を審査するための裁判が行われるためその証人として法廷に出席する。流れはフィードラーの優勢に傾いていたように思えたが、ムント側の証人が呼ばれる。そこに現れたのはリーマスがかつてロンドンで関係を結んだゴールドだった。
弁護人の尋問により、ロンドンでの不自然な出来事の数々を喋ってしまうゴールド。これにより弁護人は一連の事象はムントを失脚させるためにCIRCUS側が仕掛けたものであり、その主犯はリーマスとフュードラーであるとの弁論を展開する。すべてが白日のもとに晒され、ゴールドを人質に取られた格好になったリーマスは、計画のすべてを話した。
裁判は一転攻勢、ムントの勝利に終わる。そしてムントのその表情を見た瞬間、リーマスはこの作戦の本当の目的を知るのだった……。

いやー、流石。一筋縄ではいかないストーリーでしたね。やっぱりそう簡単に終わらせない。

「ユナイテッドステイツオブジャパン」その2

南京大虐殺に関する記述があってなんとも微妙な気持ちになりながらも読んでおります。ヘタするとこの部分の描写だけで全体駄作認定されかねないな…。なんとなく作者が韓国系アメリカ人って時点でなんか嫌な予感はしていたのだがやはり…。


ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

GW団に拷問受けたあとは若名将軍の過去話。そして六浦賀(ムウ・ラ・フラガが元ネタかな?)と石村紅功の関係も明らかになる。
大阪弁パイロット久地楽の操るメカ「ハリネズミ1号」も登場。人の顔をしているっぽいのでなんとなくジャイアントロボが思い浮かぶ。赤いラインは入っているし、乗り込むのにわざわざ梯使ったり。久地楽は何か女性パイロットと聞いて綾波みたいなのかと思ってたら思いっきり大阪弁である。なんぞこれ。
そんなロボットパイロットいましたっけね…。

「ユナイテッドステイツオブジャパン」その1

その名は、合衆国日本!

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

早川の銀背の割に面白いな。通常避けられる傾向のあるSFの中でも特に人を選びそうなレーベルだと思ってたが。
イラスト的にパシフィックリムみたいなのかと思ってたけど、中に出てくるロボ「メカ」は、どっちかというと鉄人28号っぽい。なんせ第2次世界大戦中に使われて、日本の勝利を決定づけた機械らしいので、時代を考えるとそのあたりかなぁと。
内容意外に面白くて「高い城の男」よりちゃんとエンターテイメントとして優れている感じがするね。まあSFにエンターテイメント?って感じではあるが。
メリケンの書いた変な日本人と違ってちゃんと日本人らしい日本人が描けてるのも流石。というかまあ、この作者韓国系の人らしいからそれでかな。
登場人物が現代の日本人らしいかって言うとまあ、違いますがね。違った歴史上のだから違うの当たり前だけどね。
うーん。なんというのかな。メリケンの小説はメリケンにしか通用しない風俗みたいなのあるけど、そういうのが極力ないのよね。日本占領下だから当たり前だけど。
本当に外国人が書いてんのか怪しむレベル。一応早川が出してるからニンジャスレイヤーみたいな嘘外国人の作者が書いたものでは無いことは保証されてるはずだが。

まあ、なんだ。「イーガンやチャンはわからなくても、この話は分かります」て帯が一番ふさわしいな。
最近SFが気になってる人は、グレッグ・イーガンテッド・チャンも読まなくていいからこれを読もう。SFが分かった気になれるかは分からないが。(アシモフハインラインも読まなくて良いんじゃねぇかな……)


1984年、原爆はアメリカに投下された。日本の人型兵器「メカ」と原爆により勝利を収めた日本。アメリカは分割統治され、東はドイツ、西は日本の支配地域となった。そして日本の支配地域は「ユナイテッドステイツオブジャパン」と呼ばれた。
そして40年後。ゲームプログラマーで、検閲官の石村紅功は、かつての上司六浦賀将軍から、その娘のクレアが死んだことを知らされる。

出てくるギミックとして面白いのは「電卓」。物語のメインの時代である1988年では既にスマホと同程度の機能を持っている。なおインターネットに類するものは「機界」と称されている。電話からの進化じゃなくて、電卓から進化したという系統のものだから名前が電卓のまんまなんだろうか?日本人が小型化したってことだからその名前持ってきたのか